流動 /



椿丹ss






雨だな。雨ですわね。
静かな喫茶店の中で、窓に吸い付いた雫を見ながら二人は言った。
窓の外の細い路地を目で辿ると、肥った白い猫が慌てて駆けていくのが見えた。猫には七つの家があると言うが、さて、どの家に向かっているのだろうか。――カップに残ったカプチーノを喉に流し込み、椿はそんなことを考えた。
丹生は、もう温くなったはずのアップルティーの表面を見つめながら、時折それに息を吹きかけている。猫舌、という言葉が椿の思考にぽんと浮かび、丹生のその姿にかちりと合わさった。
ねこじた。
ぽつりと椿が漏らすと、え? と丹生は首を傾いだ。
ねこじた。丹生にその単語は似合わない気がするなと考えながら椿はフォークの先で洋梨のタルトを崩し、一欠片を口に運んだ。コンポートが美味しい。


雨だな。雨ですわね。
まだ止みそうにない雨空を見上げ、もう暫く二人でゆっくり出来そうだなと二人は口に出さず呟いた。




流動する思考






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半分寝ながら書いたので、円山の思考が流動しているんです。


最近、椿絡みばかりですね。
椿可愛いよ椿。まじヒロイン。











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