動性 /




キリヒメss





いつの間にか世界を隠してしまう夜の闇は、さっと緞帳が降ろされたようで、夜の帳が降りる、というのはなんて正鵠を射た表現なのだろうと思う。
夜気に頬を撫でられながら学校からの帰り道を行くと、背の高い外灯の下に黒い影があった。小走りで近寄るとそれはやはりあの生意気な後輩で、クールぶった顔をして柱に寄り掛かってしゃがんでいた。
時たまぷつりぷつりと点滅する明かりには大きな蛾が二匹、寄ってきていた。羽音なのかそれとも光に体当たりする音なのか、やけに重たい響きが鼓膜を打つ。
「キリ、」
名前を呼ぶと彼はすっと立ち上がり、わたしの髪を指先で摘まみ、絡め、そしてゆっくりと離した。長い指には、切ったような古傷が何本かあって、触れてみたかったけれどなぜだか怖くて、それは叶わなかった。
待っててくれたん? と問うてみたが答えはなく、彼は鼻先を掻くだけだった。柔らかい銀髪がさらりと風に揺れ、明かりに当たって透けて見える。キレーやな、と甘さに侵された回路で思考した。
「月みたい」
漏らした呟きが二人同時だったので、思わず顔を見合わせる。何が、と訊くと彼は居心地悪そうに、髪が、だ、とだけ答えた。ふぅん。へぇ。――アタシも、そう思うててん。
わたしが微笑うと彼は益々顔をしかめて、尚且つ先に行こうとするものだから、慌てて黒いカーディガンを掴む。伸びるだろーが、と彼に軽く睨まれたけれど、剥がされはしなかったのでそのまま摘まんでいた。
ふと振り返ると、暗闇の中にぼぅっと外灯の光が浮かんで見えた。




夜光虫
(夜の帳に圧し潰されないよう、きみという光を求めているのかもしれません。)





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久々のキリヒメ!!キリヒメへのラブコールを最近いただくので、リハビリがてら書いてみました。が、加藤のキャラ見失いました。
ちゃんと書けているのかいないのか、自分でも判らなくなってまいりました(^p^)











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