導火線 /




椿雛ss




時間の流れるスピードは何だかアンバランスだ、と浅雛はふと思う。退屈な授業の時間はこんなにものろのろと、進んでいるのかいないのかわからないような速さで流れていくのに、この二年間はあっという間だった。重く密度の濃い、けれど触れると柔らかな時間の中には、思い出す間もなく彼がいた。

浅雛。

呼ばれて顔を上げると、椿がこちらを窺うように覗き込んできた。思わず伸ばしてしまった二本の指を、うわっと慌てたように彼は避ける。
いつの間にかうたた寝していたらしいと気付いた浅雛は、不覚だったでも言うように顔をしかめ、眉間の辺りを柔く揉んだ。前後不覚に陥る前は、さて、何を考えていたのだろうかと記憶を探ってみたが辿り着けそうもなくて、溜め息を一つ溢した。
「珍しいな」
「――は?」
「君が授業中に眠るなんて、滅多にないだろう?」
「む、」
机の上を片した浅雛は、寝てなどいない、と立ち上がり鞄を手に取った。予習の為に入れた古語辞典が、ずしりと重い。
つかつかと歩く浅雛の横に、苦笑しながら椿は並ぶ。そうして、そっと彼女の鞄を奪い取った。
「…………、」
声に出さずAGTと口の中で呟いた浅雛は、下手をすれば零れていきそうな時間を噛み締めるように歩みを緩めた。放課後のこの時間はやはり優しくて、どうか過ぎ去らないでと静かに願った。




導火線に点いた火の消し方を誰か教えて下さい。





-----
久々の椿雛!!何かわけわからんですねすみません><












第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -