同棲 /




ボスヒメss
※捏造未来





目を覚ませば、背中から彼の温もりに包まれていた。彼の胸から感じる呼吸のリズムと、わたしの首をくすぐる髪が、ひどくいとしい。腰に回された手は指先から熱を伝導して、このまま繋がれたらしあわせやのにと思った。
やけに天井の低い、ボッスンの部屋に転がり込んで数年。体重も身長も手先の不器用さも高校時代とさして変わらないのに、それでも別の何かは確かに違う。何か、としか言えないことは歯痒いけれど、辛かったり苦しかったり切なかったりということはない。何かが違うのならば、それでいい。
けれどわたしと彼との間には溝のようなものがあって、それはわたしと彼が別個の肉体である限り、決して埋まることがないのだと思う。望むことすら阿呆みたいだけど、少しだけ、辛かったり苦しかったり切なかったり、する。

「――ヒメコ、」

不意に、彼の声が首筋を這う。吐息の熱に、背筋が痺れた。
起きてたんかと問うと、彼はそれに答えず、ぎゅうと腰に回した腕に力を込めた。曖昧な境界線に阻まれたわたしとは異質な熱が、触れて融けて、恋に積もる。

「そろそろ、籍入れっか」

ドラマ性もロマンスもない言葉が、ゆっくりと鼓膜に、脳に、胸に落ちて滲みていく。
繋がっても融けてひとつになってもいないけれど、確かにわたしはその瞬間しあわせで、何やしあわせってこないなことでええねんな、と吐き出すように呟いた。
天井が、少しだけ高く見えた。




無条件幸福
(そしてまたきみと恋をする。)











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テーマ「推しとの恋」
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