軌道 /




キリ→ヒメss
やや病み







薄く白い皮膚のその内側、細い管を流れる血の一滴まで誰かを欲しいと思ったのは、初めてだった。髪一筋の軌道にまで視神経を集中させ、は、と息を呑むほど綺麗な姿を網膜に焼き付ける。
触れればきっと壊れる、それは自分が勝手に抱いた妄想ではあったが、案外、その通りだったのかもしれない。壊れるのは彼女ではなく、俺の自制心と静かに築いた信頼の方だったが。

爪が食い込むほど華奢な腕を強く掴めば、彼女は表情を歪めた。痛いのだろうか――どこが、とは訊ねないけれど。細い腕に滲んだ血をねっとりと舐め上げ、抱き締めてキスをした。
彼女の口腔から(或いは肺から)酸素を奪うような荒々しい口吻けとも言えないような口吻けと、ぎりっと骨が軋むような抱擁。きり、と彼女の声が耳元で掠れる。泣きそうな声だとわかったけれど、どうしようもなかった。

今まで守ってきたものがすべて、自分の手によって、しかしそれはあずかり知らない力の所為で、瞬く間に崩れて零れて沈んでいく。欲しかったから手に入れたのに、彼女は決してこの掌中には納まらなかった。
舌に残る血の味が、避けようのない訣別を告げていた。




閃光に似た欲望の軌道
(欲したことが罪なのでしょう。)






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3月の屑箱更新率が酷すぎたので、久々に書いてみました。
久々がこれですみません(^p^)

円山(○歳)、夢は甘々なキリヒメを書くこと。












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