悲慟 /





笛吹BDss




今日は朝から雨だった。
正確に記すなら、昨夜から降り続いている。きっちり授業を六時限目まで終えても、雨はまだ止みそうになかった。濁ったような空を切り取った窓には水滴が伝い、その向こうの景色を曖昧にさせる。
冷たい雨の中を歩いて帰るのが億劫で、誰もいない放課後の教室にひとり残り、雨の行方を見守る。午後になったら止むだろうと勝手に思っていたが、雨脚は朝よりも強まっている気がした。
帰るタイミングを完全に逸してしまい、窓辺から世界をただ見つめる。雨は好きじゃない。肌を打たれる度、そこから過去が浸透してくるように、いつかの記憶が呼び覚まされるからだ。胃の奥が鈍く痛む。こんな感覚、久々だ。
窓に背を向けてうずくまると、雨が窓を打つ音がやけに大きく感じられた。熱くて冷たい、質感を伴った不快感が胃から迫り上がろうかという時、不意に教室の戸が音を立てて開かれた。

「スイッチ、誕生日おめでとう!!」

そんな声とともに雪崩れ込んできた友人たちは、小さなクラッカーを次々に鳴らした。目の前でカラフルな色が飛び散り、曇りがちだった視界を染める。
数多くの友人たちの真ん中に、赤い帽子と金色の髪が見えた。どんな色彩よりも目に鮮やかに映って、だから、涙が滲んだのは多分、その色が目に染みたからなのだと思う。強がりなんかではない。決して。

雨の音が、徐々に遠ざかっていった。




悲慟には飽きたところだ
(そろそろぼくも笑おうか。)



Happy Birthday dear Kazuyoshi!!
2012.02.28





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大好きだよスイッチ!!!!

スイッチ主役の時、いつもタイトル暗くてごめんなさい。













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