衝動 /




スイ→澪ss




その長く真っ直ぐな黒髪に触れてみたいと思ったことは一度や二度の話ではなくて、不意に、そして衝動的に、度々沸き上がってくる欲だった。梳いて絡めて解いて、そうして撫でてみたいと、そう思ってしまうのだ。
廊下の先を行く彼女の後ろ姿に意識を傾けながら、僅かに手を伸ばしてみる。しかし急に正気にかえって引っ込めようとすると、唐突に彼女が振り向いた。
「何かしら……視線を感じるのだけれど」
「別に。相変わらずオカルト臭いと思って見ていただけだ」
慌ててパソコンに指を置いてそう答えると、彼女は薄く笑った。にたり、と言うか、にやり、と言うか、とにかく嫌な感じの笑い方だった。
「あら、非科学的なことが嫌いなくせに、非科学的なことを言うのね」
「君は要らないところだけ口が達者だな。そんなことを言っていないで、俺に幽霊を認めさせるだけの物的証拠を集めてきたらどうだ?」
「そんなことばかり言って、頭ごなしに否定するのが科学の立場なのかしら」
「盲目的に信じるよりはマシだ」
この会話に、きっと終着点はないのだろう。ずっと平行線のまま延び続けて、どこにも辿り着かずにまた進むのだ。
だから恐らく、俺が彼女の髪に触れることもないのだと思う。




譲れない駆け引きは、双方の妥協点も見えないまま。
(それを臆病と人は言うのだろう。)





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今、円山の中で、スイ澪がアツい……!!(遅)












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