瞠目 /




ボス(→ヒメ)+キリ




何言ってんだ、と。
加藤は呆れたように藤崎を見下ろした。背丈の違いより生じるその視線は物理的にどうしようもないので甘んじて受け入れるしかないが、どうにも見下されている気がして藤崎は眉を寄せる。尚且つ、加藤は階段の、自分より上のステップに立っている。それはずるいだろ、と藤崎としては思わざるを得ないが、別にこの生意気な後輩は彼より上に立とうという意識などない。ただ単純に、すれ違い、声をかけたのが今いる場所だっただけだ。
馬鹿だろ、アンタ。
加藤は尚も挑発的な言葉を投げ捨てる。いい加減気付けよ、それともそれは何かの予防線なのか?
藤崎は、はぁ? と顔をしかめたまま首を傾げた。ええと、何の話をしてたんだっけな。確か、鬼塚のことどう思ってんだとか訊かれたんだよな。
彼は加藤のそんな質問に対して、別にと答えた。別に、何とも思ってねーよ。仲間だろ。まぁ、一緒にいて楽しいし、安心するし、尊敬もしてる――でも意外と涙脆いから、守ってやりたいなと思う時も、無くもない……。
目線を忙しなく動かしながらそう告げると、加藤は息を吐いた。そして呆れたように言葉を発したのだ。何言ってんだ、馬鹿だろアンタ、と。

「それは、恋だろ」

コイ?
加藤の口から零れた、およそ彼には似つかわしくない単語に、藤崎は戸惑う。音声が上手く言語化されないまま、耳の辺りで浮遊してしまう。コイ、て何だ。
瞬きも忘れて細い呼吸を繰り返し、ようやく「恋」という漢字に至った藤崎は異物を呑み込んだかのような息苦しさに襲われた。気付いてしまえばもう彼女を意識しないことなどできず、ああなんて余計なことをしてくれたんだ、と既に立ち去った加藤を鈍く恨んだ。




目を見開いた頃にはサヨナラ
(責任取ってくれよ!!)






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ボスヒメ書きたいけれど不調な今書くのはちょっと……という葛藤から、中途半端な感じになりました。

ボスヒメ+キリは鉄板!!











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