童貞 /




椿丹ss
ロスバ話注意!!!








幽玄な月が沈む。潤んだように青む空は未だ夜の静けさを残しつつ、緩やかに朝へと傾いていく。
朝を迎えるというのに、この胸に蟠る心地の悪さと晴れない憂鬱は一体何から生じるのだろう。――そんな理由なんか百も承知だ。
そっと隣に目を向けると、波の寄るシーツに置かれた白い肢体が視界に入り、少しだけ、ほんの少しだけ、胸の奥底に欲が湧いた。そんな自分に尚更憂鬱になり、口の中に苦いものが拡がる。
露わになった彼女の額に指を滑らせ、そのまま、目尻に残った涙の跡を辿る。痛くないです、という昨夜の彼女のか細い声を信じる振りをしてそのまま最後まで行ったことを、今更ながらに悔やんだ。
女性の方が明らかに失うものが多くて、それなのにぼくは何もしてあげられない。大切な一度目を奪っただけだ。
ふくよかな唇にそっとキスを落とし、すまない、と呟くと彼女が僅かに身動ぐ。
つばきくん。小さく動いた唇がそう告げた気がしたのは、ぼくの気のせいだったのかもしれない。

初めては全部、椿くんが良いんです――。

そんな彼女の言葉を思い出し、縋るようにシーツを掴む。なぁ丹生、本当にぼくで良かったのか?
答えは帰って来ず、ただ静かに青白い朝が訪れた。




白百合が枯れる朝
(ぼくが奪ったきみの純潔に口吻けを。)













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