伝導 /




榛雛ss




榛葉さんはわたしに何もしない。押し倒したまま呆然としたようにわたしを見つめ、キスもしなければ指先で触れることもしない。よく女の子に綺麗だと褒められている双眸は果たして、ちゃんとわたしを映しているのだろうか。

「……私には、手を出す価値も無いのか?」

静かに問うと、彼は一瞬の間を置いて哀しげに眉根を寄せた。そんな顔をしないでほしい。訳がわからない。
色んな女の子に手を出したくせに。わたしには触れてすらくれない。そうだ、この人は、優しくなんか、ない。
目の淵から零れた涙が拭われることはなかった。




嘘だろう?
目の前のデージーちゃんを見たまま、ぼくは固まった。好き過ぎると手を出せなくなるというけれど、そんな、まさか。ぼくの身にそんなことが起きるなんて。
たくさんの女の子を抱いてきた経験など、何の役にも立たない。彼女の涙を拭う術すら、ぼくは探しあぐねているのだから。

「俺は、ちゃんと、デージーちゃんがすきだよ、」

嘘みたいな事実を告げると、彼女の涙はより一層勢いを増した。




伝導しない心
(伝わらない気持ちがこんなにももどかしいなんて、)





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萌えるCPをとりあえず書いてみたその1











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「見えない臓器の名前は」
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