振動 /




クリスマス没文ボスヒメ





あ、雪。
そう溢した佑助の視線を辿るように、一愛は窓の外に目を向けた。クリスマスツリーの飾りつけの手を止めた彼女は、白く曇りかけた窓を軽く拭き、ああほんまやと口許を緩めた。
下校していく生徒の間をすり抜けるように、白い雪が舞っている。風に吹かれてふらふらと軌道を変える雪片は、なかなか地面に落ちてこない。なんや苛々させよんな、と一愛は胸中で呟いた。
「こんな天気の中で野外イベントとか、スイッチもツイてねーよなぁ」
「ええねん。楽しそうなことアタシらに知らせんと、一人で行った罰や」
「ま、そーだな」
二人きりの部室なんて別に珍しくもないのだけれど、ちかちか光るツリーのライトを見つめているうちに、クリスマスをこいつと二人で過ごすんやなぁと、一愛は不思議な気持ちになった。
灯るカラフルな光を中にいる佑助が一愛の方を向いて、淡く微笑む。心臓を擽られたような気がして、一愛は顔を赤らめた。
外で舞う雪に音はすべて呑み込まれたのか、自分の鼓動以外聞こえない。閉ざした口の奥から薄く漏れた息に、ツリーの光が微かに揺れた気がした。


フォークの先でケーキの苺をつつきながら、毎日クリスマスだったらええのにと一愛が小さく呟くと、佑助は曖昧に頷いて、でも一年に一回だからトクベツなんだろと尤もらしいことを言ってみせた。
何やそれ、と片頬で笑いながら一愛はケーキを掬う。佑助を意識しすぎてその味がよくわからなかったのは、彼女だけの秘密だ。




振れ動いた心臓





-----
今さら感が半端なくてすみません(^p^)












「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -