動揺 /




藤+鬼ss
OGRESS編後捏造







鬼姫。なんて、大層な呼び名だけど、ちょっと他より喧嘩が強いだけの普通の女の子なんだと、濡れたワイシャツを見ながら思った。
強いのは確かなのだろう。けれど堰を切ったように泣き出した彼女は何て言うか、普通に普通の女の子で、と言うか普通より傷つきやすく繊細なように見えて、震える嗚咽ごと抱き締められたらなぁ、なんて思った。


「なぁ、やっぱおまえも送ってくって」
高橋さんを家に送り届けた後、鬼塚に向かって声を掛ける。三歩ほど前を行く彼女はちょっとだけ振り向いて、要らんと軽く言った。
「あんた、見てたやろ? アタシ、強いねんで」
「まぁ、そうかもしんねーけど……でも、鬼塚だって女なんだから、何あるかわかんねーだろ」
「オンナ、」
鬼塚は不思議そうにその単語を口にした後、小さく笑った。空気が優しく震えて、鼓膜がくすぐったい。
せやなぁ、と彼女は溢し、立ち止まった。背中の辺りで揺れる金髪が目映くて、目が眩みそうだ。
「ほんなら、家まで頼むわ」
「……おう」
短く答えて、彼女の横に並ぶ。当たり前かもしれないが、鬼塚は俺より小さくて、細かった。

ありがとう、藤崎。

隣から零れた呟きに、別にと答えて二人で歩き始める。そう言えば彼女のその礼は、何に対してのものだったのだろう。訊くタイミングは、完全に霧散してしまった。
涙を吸った肩口が、冷たかった。



静寂に満ちる動揺






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苗字呼び萌え!!













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