煽動 /




ボスヒメ
出遅れ感満載の藤崎誕文
一応未来設定
ごく僅かにえろい(と良い)





彼女から零れた吐息を拾うように唇を重ね、目も瞑らず近い近い距離でお互いを見つめる。伏せがちな長い睫毛も程好い形で隆起した鼻も青っぽい目も生っ白い額も、全部全部欲しいのです、なんて言ったらこいつはきっと少しだけ眉をひそめて、何言っとんの、きしょいわ、とか照れながら言うんだろうな。
舌の先で彼女の唇を軽くつつくと薄く隙間が開いて、そこから舌を侵入させる。彼女の咥内は熱いのだけど、俺の舌も熱いからよく温度がわからなくなる。
ん、と鼻にかかるような甘い声が唇と唇の間から聞こえると、俺の身体はどうしようもなく火照る。耳までじんと熱くて、ああ格好悪いと反省した。
部屋の暖房は点けていない(なにぶん金のない身分なもんで)けれど、二人分の熱で室温が上がる。服を脱いで素肌を晒しても、肌が粟立つことはなかった。むしろ暑い。
彼女のロングTシャツの隙間から手を潜らせ、腰を撫でる。滑らかな肌は触れる度に僅かに震え、笑うなと釘を刺すと、だってくすぐったいねんもんと彼女は遂に声を立てて笑い出した。いっつもこうだ。
くそ、と呟きながらTシャツを脱がせると、黒い下着が目に入った。―――……ええと、気のせいかな、面積が小さいような。
まじまじと胸元を注視していると、彼女は慌てて腕でそこを隠そうとした。俺は急いでその腕を掴み、赤く染まった彼女の顔と胸元を順に見る。
「こ、れは――何すかね?」
「訊く!? 訊くんかおまえ!!」
「いや、ええと…………いやらしい下着してんな、おまえ」
「いらーん!! そんなデリカシーに欠けた言葉いらん!! それとも何か、言葉攻めかそれ!?」
彼女は呆れたように溜め息を漏らし、掴まれたままの腕を見て痛い、と小さく言った。しばらく逡巡した後、俺はその手の力を弱めた。振りほどけるような握力しか込めなかったが、彼女がその手を振り払うことはなかった。
だからあれや、と彼女は口を開く。だからどれだよと思ったが、怒られることは必至なので、俺は黙って続きを待った。
「だからな、今日、…………うび、やん」
「あん?」
「いや、だから今日、あんたの誕生日、やんか」
「うん。―――うん?」
まさかと思いつつもいやしかしという考えを捨てきれず、目線をあちこちに向ける彼女の顔をじっと見る。赤らんだ顔に潤んだ瞳、ああなんかオアズケくらってる気分。
俺はまさかなと笑いつつ、アタシをプレゼントってか? と訊いてみる。すると、彼女の顔は更に赤く湯立った。
「え? いや、ジョーダン……」
「アカン……何やもう死にたい……」
「え、ちょ、」
まじで?
そう問うと、彼女はうっさいハゲと力ない声で罵った。俺はちょっとだけ笑い、もう一度彼女に口吻けた。彼女の中の酸素を食らうように深く深く深く、舌を探って上顎を舐め歯列を辿る。
離れると上気したお互いの顔が間近にあって、どちらからともなく額を寄せる。こつん、と優しくぶつかった額と額は体温が融けて混じって気持ちいい。
俺はそっと口を彼女の耳元に寄せ、
喜んでいただきますけどね
と低く言った。
阿呆、と小さく放たれた声は、じわじわと俺たちを取り巻く熱気に融けて消えていった。



煽動された本能
(最高の誕生日じゃないですか。)







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THE 中途半端!
藤崎おめでとう!!












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