道程 /




出遅れ感満載の双子誕ss




空が青い。風は少しだけ冷たくて、パーカーの裾をはためかせる。空気は乾燥し、それが頬に触れるだけで水分がだんだん奪われている気がした。
くぁ、と欠伸をひとつ漏らすと、隣で花を抱えながら歩く椿が、たしなめるような呆れたような目(多分、後者)でこちらを見た。
「そんな大きな欠伸をして……君には緊張感というものが欠けているな。大体にして、もうちょっとちゃんとした格好はして来られなかったのか? そのTシャツ、穴が開いているじゃないか」
「うっせーな、これはこうゆう仕様なんだよ」
俺たちはセンスが合わない。けれど歩幅は同じで、気持ち悪いくらいタイミング良く足音が揃う。
兄弟、双子、血縁――なんだかどれもぴんと来なかったけれど、多分俺たちはそれでいいんだろう。


目的地に着くと、椿は感慨深そうに息を吐いた。
「ああ、なんだ。意外と――近かったんだな。まあ、当たり前かもしれないが」
「だな。……もっと早くから来るべきだったな」
血縁を失った彼らではあったけど、一緒の場所に眠ることは出来たらしい。無縁仏とも少しだけ違う、他とは異質な、墓。
花を供えて線香をあげれば、白く細い煙が青い空に向かって立ち上った。届くだろうか、――俺だったら、こんな辛気くさい煙が届いても嬉しくないが。
二人並んで手を合わせ、泣きたいようなむず痒いような、そんな気持ちを抑える。悲しいとは思わない。ただ、何かが――失くしてしまった何かが惜しくて、しこりのように胸につかえている。

「……誕生日おめでとう」

俺がそう呟くと、椿は驚いたように顔を上げた。なんだ急に、と慌てたように言うもんだから、おまえにじゃねーよ、と俺は口を尖らせる。最初は訝しんでいた椿も、墓石を見てようやく、ああ、と合点したように頷いた。
「誕生日、おめでとうございます」
「あ?」
「君にではない!!」
「だと思ったぜ」
「ふん」

俺たちはしばらく墓石を見つめて、それからありがとうと呟いた。これはちゃんと届くといいなと、心の底からそう思った。
秋と冬の狭間に揺れる空は、ただただ青く広かった。




僕らに至るまでの道程






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大遅刻ですみません!!
双子大好きだ!!おめでとう!!












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