憧憬2 /



憧憬の宇佐美視点


宇佐美と加藤(と藤崎と鬼塚)ss
(宇→藤、加→鬼)






雪が降っていた。茜色の見えない空はただ重苦しく、ざかざかと雪を落としている。
どこからか当たる光に輝く銀世界の中、黒ピンで留めた銀髪(雪より綺麗)に雪を積もらせ、希里くんは歩いていた。ゆっくりとした歩調で白い地面を踏みしめつつ、進む道に足跡を残している。
ふと彼は顔を上げ、わたしの姿を見て僅かに眉をひそめた。(失礼な話ですね)
彼の真っ黒な瞳に、この真っ白な世界はどうやって映っているのか興味はあったけれど、男性が苦手なわたしは彼の目を真っ直ぐ見ることなんか出来ない。俯いて目を伏せると、真っ赤な手の中のカフェオレの缶が目に入った。
やるよ。
手袋を忘れて、手をこすり合わせていたわたしに、例の赤いキャップのあの人が渡してくれた。手が温かい。でもそれ以上に、どこかお腹の底がぽかぽかしてる。
どうして、と思わず小さく漏らすと、無言で立ち去ろうとしていた希里くんが「あん?」と振り向いた。

「どうしてあの人は、わたしのことを放っておいてくれないのかしら」

いつもいつでもいつだって、こんなわたしのことなんか、捨て置いてくれても構わないのに。
零れた吐息が、白く立ち上る。
希里くんはただ一言、知るかと言って立ち去った。(それは正しい反応だと思います。)
遠ざかっていく銀髪を眺めながら、彼は、と考える。彼はわたしと同じことを考えないのかしら――。
靡く金髪と、馬鹿げた赤いキャップ。並んで歩くその姿を思い起こして、憂鬱な気分になった。
手の冷たさに侵されたカフェオレはもう、その温もりを失い始めていた。




羨望にも似た憧憬
(欲しい、とは望んでいないけど。)












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