同色 /




キリ⇔ハニss




ぐっ、とこの世のパステルカラーとビビッドカラーを凝縮させたような、濃く淡く彩られた日々を過ごしているうちに、季節は秋から冬へと移っていた。耳から頬、鼻の頭へと流れた風は暖冬という名に似合わず、身を竦めるほど冷たくて、コートの前を慌てて閉じる。さむい、と呟いた声が冷気に紛れて消えて、目の前には小さく靄だけが、言葉の残滓のように浮いていた。
濁った色の空をぼんやり眺めていると、いつの間にか隣にキリくんが立っていた。絶妙な距離を取ってくれているのは、私のためだろうか、彼自身のためだろうか。ぬくもりに触れることのないその距離に、優しさの温度を感じて、私は目を細めた。
「寒いな」
ぽつりと、彼が言う。キリくんも寒さを感じるのかと、当たり前のような意外なような、それでもちょっと驚いた思いで彼を見上げる。鈍色のピアスに触れている部分の耳がやや赤くて、それが私の指先の色に似ていたから、彼も私も血の通った人間なのだと改めて、知る。
すっと歩き始めたキリくんの、一歩半後ろをついていく。長いコンパス。風に揺れる銀髪。響かない靴音。道に落ちた薄い、影。私、が、私のまま、今、触れられるのは、その影くらい。
どこからか、ちょっと切ない曲が聞こえてくる。この時季の歌は、陽気なようで実はどこかしら哀しい歌詞だと思う。
「――クリスマス、か」
風に乗ってキリくんの声が聞こえた。うん、と頷いてから少し考えて、
「キリくん、似合わないね」
と付け足す。こんなこと言えるのかと、自分でも驚いた。
振り向いた彼はちょっとだけ眉間に皺を寄せて、うるさい、と唇の先で呟いた。
「甘いもんとか、好きか?」
「え……、うん、」
「あー、と、……ケーキは?」
「すき、だよ」
この会話はどこに進むのかしら――。首を傾げて彼を窺うと、先程よりも少し、さらに耳が赤くなっていて、それは多分、私も同じなんだと思う。彼も私も、赤い。冬の冷たい白さに紛れないくらいに。
クリスマスソングはやっぱりどこか切なくて、けれど明るい。




聖夜に積もる
(白い雪にも似た想いは、彩りの中でも消え去ることなく。)





-----
20131224













人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -