道生 /




最終回後
ボス←ヒメss




鼻先を掠めたのは湿った草のにおいだった。見れば、道端に咲くコスモスの花弁の上で雫が煌めいていた。
雨上がりの空は遠い。一歩一歩坂を上っていっても少しも近付かなくて、ヒメコはゆるりと息を吐いた。
流れる雲、憂いを含んだブルー、飛んでいく飛行機。そのすべてをウェッジソールのサンダルで蹴飛ばすように足を天に向かって突き出せば、ただ宙が音のない痛みを訴えた。
ボッスンが居なくなって数年、ボッスンと出会ってからの年数とほぼ変わらないくらいのとしつきが過ぎてしまった。いつまでも待ってへんぞと思っても、結局、ボッスンへの想いは捨てられずにいる。
「あほ、ちゃうか、」
自分に向けて嘲ってみたが、そうすると余計に自身の心が透けて見えて、あの頃と変わらず未だすきらしいと改めて知った。
冷たくなってきた風は、坂道を上って天に還っていく。ボッスン。呼んだわたしの声が彼の元へ届かないか、淡い淡い期待を込めて口にした。
女心と秋の空。移ろっていく空の色はわたしの悲しみにも似て。それでも彼を想うわたしの心は、表情を変えない。




コスモスの花言葉











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