【部活に私情を持ち込まない】跡部さんが決めた部活のルールの一つだ。「余計なことを考えてる暇があるなら、その分必死にボールを追え」とも言っていた。

 頭では分かっていても、つい佐倉さんのことが気になってしまう。

「あ……」

 打ったボールはネットを越えることなく、コロコロと自分のコート内に虚しく転がった。

「どうした、長太郎! これで三度目じゃねーか!!」
「すみません、宍戸さん……」

 同じコートに入っている宍戸さんからため息が聞こえてきた。テニスは、サーブを打つ人からゲームが始まる。その打つ人がネットばかりしていたら、試合は展開しない。その上、二回続けてサービスを失敗した場合、相手の得点になってしまう。

「お前。これが公式試合だったら、どうするんだ!? 相手にただで点数やってるようなもんだぞ! ……サービスも入らねーような下手くそと俺はペアを組んだ覚えはない」
「すみません……」
「……ったく。何か悩んでんだろ? 部活終わったら、話聞いてやるから。今は試合に集中しろ! いいな!」
「……はいっ! ありがとうございます、宍戸さん!」

 隠しても、宍戸さんには見透かされる。だから、つい彼を頼ってしまう。それじゃダメなのに……。もっと強くなりたい。技術面でも、精神面でも。



前へ|次へ


拍手

しおりを挟む

目次
小説置き場
top

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -