いつも以上に気合いが入る。佐倉さんをどうしたら説得できるか、考えるのはそのことばかり。

「長太郎! ボールに魂入ってるじゃねーか!! いいボールだぜ!」
「ありがとうございます、宍戸さん!!」
「よっしゃ! もう一本!!」
「はいっ!」

 彼女のことを考えると、テニスの調子が上がっていく。不思議な感覚だ。高く放り投げたボール。真っ直ぐ、佐倉さんに届くように思いを込めて「一球入魂!」ラケットを振り下ろした。ボールは速度を上げて、ネットを越えていく。先で待つ宍戸さんの足元手前のライン内で地についたボールは跳ね上がった。

「くっ……重い!」

 両手で何とか返そうとした宍戸さんのラケットもろともボールは弾き飛んだ。カラン、カラン……宍戸さんの後方でラケットが転がっていく。

「やればできるじゃねーか、長太郎!!」
「ありがとうございます!」
「……見てみろよ。ガット、穴空いてるぜ」
「あ……」
「こんだけ威力があれば、佐倉にもお前の気持ち届くかもな!」
「し、宍戸さん!」
「ははっ! 図星か? ……応援してるぜ!」
「……まったく、あなたって人は」
「さ、次だ! まだ練習は終わってないからな!」
「はいっ!」


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