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校門で待っていた宍戸さんと合流し、暗くなった道を歩き始めた。もちろん話題は、佐倉さんのこと。
「なるほどな……。気にならないでもねーけど……」
「すみません。部活中に考えることじゃないですよね……」
「佐倉 ことは……どっかで」
「え? 佐倉さんのこと、宍戸さん知ってたんですか?」
「知ってる……いや、正確には名前を【聞いた】んだ。確か、去年同じクラスだった奴が話してた気がする」
佐倉さんは可愛い顔立ちをしているのだが、歯に衣着せぬ物言いで少しキツいところがある。だが、そこがギャップとなり、同級生の男子たちから人気が高い。上級生まで人気があったとは知らなかった。
「長太郎は去年、佐倉と同じクラスだったんだろう? 何か変わった事はなかったのか?」
「特には……」
思い当たる出来事は特になかった。佐倉さんはいつだって明るくて、音楽が大好きで、彼女が奏でるピアノの音が好きだった。聴く人の心を掴んで離さない魅力的な音。クラス替えで別々になってからは彼女が弾くピアノの音を聴くことはなくなってしまったが、彼女は今でもピアノを弾いているのだろうか?
「悩みなら、いつでも聞いてやるから。部活の時は、部活に集中しろよ!」別れ際、宍戸さんに肘で突かれた。公私混同は良くない。気を引き締めて明日からの部活に励もう。
「はい! 宍戸さん!」
「じゃ、また明日な!」
今日が終わる前に、佐倉さんの作った曲をもう一度弾いてみようと考えながら帰路についた。
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