太陽と交代して現れた月が闇を照らす頃、私の部屋に彼がやって来た。
「邪魔するぜ」
紫のシルク素材のパジャマを着た景吾。髪をセットしてない彼を見るのは初めてで、別人のように見える。髪型一つで印象って、こんなにも変わるものなんだ……。
景吾が私の隣に入ってきた。さっきまで広かったベッドも今では少し窮屈に感じる。
「ん? なんだ?」
「髪……下ろしてるのも、カッコいいなと思って……」
「フン、今さらだな。俺様は何でも似合うんだよ」
「……どうしよう」
「足、痛むのか?」
「違う……。景吾と一緒に寝れない」
「理由、話してみろ」
「いつも以上にかっこいいから……。心臓壊れそう……」
「慣れろ。ずっと見てれば慣れる」
「無理!!」
「……ったく。手がかかる。これならいいだろ?」
私の方を向いて寝ていたが、景吾が背を向けた。後ろ姿だけでも、十分イケメンな雰囲気がある。
「はぁ……これだったら、自分のところで寝たほうがよかった」
「なんで、一緒に寝ようと思ったの?」
「そんなの決まってるだろ? 明日から俺はいない。しばらく、お前と会えない。……償いには十分だろ? ……ユア?」
ベッドが揺れた気がした。波打つ海の中。私の名を呼ぶ景吾の声が微かに聞こえてくる。
「ちっ……寝やがったか。まぁいい。この方が俺がユアを堪能できるからな。……しばらく会えないんだ。このくらい許せよ?」
夢の中。景吾と海に入り、波に揺られながらキスをした。チクッと胸元に痛みが走った。見れば、クラゲがいる。刺されたらしい。必死で追い払おうとしたが、浮き輪が小さくなり、体がはまって身動きが取れない。
「け……いご……」
「もう少しだけ、我慢しろ」
「痛っ!!」
「わ、悪い! 大丈夫か!? ……って、寝言かよ。紛らわしい……。このくらいにしといてやるか。……怪我、早く治せよ。俺が帰宅するまでに。おやすみ、ユア」
仰向きで寝ている私を景吾は抱きしめながら、朝が来るまで寄り添って眠っていた。
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