景吾の腕の中で朝を迎えた。昨晩の出来事が夢のよう──とはならず、腰が痛い。珍しく景吾は、まだ寝ている。彼から抜け出そうとしたが、がっちり抱き締められていて抜け出せない。


「景吾……」
「……どこにも行くな。お前は俺の側にいればいい」


 寝言……? 閉じたままの瞼。次第に彼の腕の力が強くなっていく。


「ユア……離したくない」
「く、苦しい……」
「行くな……」


 寝言とは言え、こんなにも思われていることが嬉しい。私だって同じ気持ちだよ……景吾。彼に顔を埋め、温もりを確かめた。


 胸が苦しい。離れたくない。もっと──ずっと側にいたい。こんなにも好きなのに。昨日までは少しの間離れるだけと割り切って、眠りについた。でも、そんな張りぼてのやり過ごし方じゃ、この気持ちはやり過ごせない。だって、好きの気持ちは加速するばかり。止まらない愛をどうにかすることなんて誰にもできない。唯一できるとすれば、隣で寝ている景吾だけ。


「好きだ……ユア。俺が幸せにして……やる……」


 その彼が愛を囁いている。それも夢の中ででも。もう止められない。痛い心を代弁するように目から涙が落ちていく。ずっと、このまま──ずっと彼の腕の中で眠り続けたい。


「景吾……帰りたくないよ……ずっと側にいたいよ……」


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