すぐに上から退いてくれたが、押し潰された私はそのままベッドにうつ伏せのまま。
「苦しかった……」
「急に倒れたから、全体重かけちまった。悪かったな……」
「ううん」
ムードのある場面が一変して、コントみたいになってしまった。それがおかしくて、笑みが溢れる。
「なにが可笑しい?」
「だって……凄くドキドキするはずだったのに、間抜けなシーンになっちゃって……」
「ふっ……確かにそうだな」
景吾が私の隣に仰向けで寝そべった。互いに顔を見合わせて、微笑みを交わし合う。……幸せに溶けてしまいそう。好きな人がすぐ近くにいて、一緒に顔を綻ばせて、心が温かくなる。
「……ユア、こっちを向け」
「こう──!?」
寝そべったまま、キスをした。手招きされ、彼の腕を枕代わりに身を寄せた。同じシャンプーの香りが合わさる。
「今日は、このまま寝るぞ。朝まで離れるなよ」
「……でも、私……寝相悪いよ? 景吾のこと、蹴飛ばすかも……」
「気にするな。……その時は、きつくしつけてやる」
「え!?」
「冗談だ。……けど、首筋に痕が残ってるかもな」
「それって……」
「あぁ。【置き土産】だ」
「うっ……ちゃんと寝る努力しよう」
「なんだったら、今つけてやろうか?」
「遠慮します!」
「……仕方ねーから、こっちで我慢してやる」
目が合っては唇を奪われ、全然眠れる気がしない。でも、景吾の腕の中は居心地がよくて落ち着いた。日溜まりにいるみたいだ。彼に体を寄せると、大きな手がやさしく頭を行き交う。
「眠れないって言ってたくせに……寝るのが早い奴だ。お前が来てから、もう一週間か……。そろそろ、ちゃんと伝えなきゃな。……寝てるときに言っても意味ないが──好きだぜ、ユア」
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