一番欲しいもの/ヒソカ(H×H)
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6月6日、午前零時。約束の時間になっても、彼は現れない。いつもなら、5分前には来ているのに。
もしかして──勘づかれた?
いや、それはないはず。こっそりと準備を進めていたし、常に周囲にも気を配って警戒していたから、気付かれてはいないだろう。
「やぁ🖤 待ったかい?」
「ううん、今さっき来たとこ」
「……そう◆ それで僕に話って?」
「ヒソカ、お誕生日おめでとう!!」
拍手をした後、プレゼントを渡そうと考えていたのだが、目の前の彼はニコリともしていない。むしろ、「だから?」と冷ややかな視線を私に送っている。
「あ、あれ? 今日、誕生日だよね?」
「うん、今日は僕の誕生日◆ ……だから?」
「えっと……プレゼントを」
「プレゼント? 君が、僕に?🖤」
「何がいいか迷って……。一緒にヒソカの好きなものを食べれたらと──!?」
話が終わらない内に彼は私を胸の中に閉じ込めた。ガッシリした腕にホールドされ、これではプレゼントが渡せない。
「ふふ🖤 君もその気になってくれたんだ◆」
「え? ちょっと待って! 何の話!?」
「君って意外と大胆なんだね◆ 僕の好きなものを一緒に食べたいだなんて🖤」
「え!? 盛大に何かを勘違いしてない!? 私がプレゼントしたいのは──」
唇に彼の人差し指が当てられ、話すことを禁じられた。仕方なく、黙って彼の話を聞くことにした。しかし、この流れ──嫌な予感しかしない。
「ダメだよ、今は◆ ちゃんと受け取るから──ベッドの中で、ね?🖤」
「違う!!! そうじゃない!!!」
軽々と私を抱え、彼は月夜の中を移動していく。結局、今年の誕生日もこうなった。なんだかんだ毎年このパターン。
「君が一生懸命プレゼントを選んでくれたのは、知ってたよ◆ でも僕にとって、一番欲しいものは──言わなくても分かるでしょ?🖤」
そんな顔で言われたら……拒めない。
「お誕生日おめでとう、ヒソカ」
落とされた口づけ。長い長い夜の幕開けだ。
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