薔薇の香りは、あなたの香り/観月はじめ(テニプリ)
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あなたを思い出していました。
庭を彩る深紅──あなたが好きな薔薇。でも……この庭で薔薇の手入れをするあなたの姿はもうない。寂しいけれど、仕方がないこと。そう分かっていても、まだ気持ちの整理はつかなくて。広い庭にあなたの姿を探してしまう。
「一緒に見たかったなぁ……」
一人で世話を続けている裏庭の薔薇たち。今年も綺麗に咲いてくれた。
「おや? ちゃんと手入れをしているようですね」
「……観月さん!?」
「なんです、幽霊でも見たような顔をして」
「え、だって──」
「大学といっても、目と鼻の先。自分で育てていた薔薇がどうなったか、見に来てもいいでしょ?」
「も、もちろんですっ! むしろ、毎日来ていただいても!」
「卒業した私に世話をさせるつもりですか?」
「いえ! そうじゃなくて……」
ふわりと香る薔薇。花びらの中にでも包まれたのかと思うほど、観月さんの腕の中は薔薇の香りがする。
「……あなたの世話なら大歓迎ですよ」
「わ、私の世話は十分です! 自分でなんとかします!」
「そうですか? せっかく、テスト勉強の手伝いを」
「テスト勉強は……見てほしいです」
「フフ……いいですよ」
薔薇の香りは、あなたの香り。咲き誇る薔薇たちに囲まれていると、つい……。こうして、あなたに包まれている温もりを思い出してしまう。
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