花見の約束/岡田以蔵(ちるらん)
-----------------------------------------------

「今年も、よぉ咲いたのぉ!!」

 純白をほんのり紅(あか)に染めた控えめな花が私たちの頭上を彩る。『花より団子』という言葉もあるけど、幼なじみの彼は花を見上げながら、私特製のおにぎりを頬張っている。

「来年も見れるじゃろうか……」

 目まぐるしく世界は駆け、変化を続けている。今日明日も分からない今、来年のことなどもっと分からない。それでも、『確かなこと』はある。

「私は、いつでもここに居(お)って、アンタの帰りば待っとるよ」
「……そうじゃな! ワシぁ、またここに戻ってくる。そん時は、また花見するぜよ!」

 剣の道を歩む彼のゴツゴツした手。それに自分の頼りない小さな手を重ねる。握りあった手のひらが約束の証。ひらひらと舞う花びらの中、同じ色に頬を染めた私と彼は笑みを交わす。互いに何も言わないけど、気持ちは通じている気がした。

 きっと、また会える。彼は、強い剣豪だ。帰ってきたら、またトシゾーのような強者と剣を交えた話を楽しそうにするのだろう。私は、そんな彼の無事を祈りながら、来年の春が来るのを静かに待とう。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -