「はぁ…参ったなぁ…」

ため息をついて呆然とするのはきり丸。
その背中では赤ん坊がすやすやと寝息を立てている。

「目前の銭に目が眩んで子守りのアルバイト引き受けちゃったけど、次手裏剣の補習なんだよなぁ」

流石に赤ん坊背負って手裏剣は無理だ。
困ったなぁとうろうろしていると、青い制服が目に入った。

「三郎次先輩ー!左近先輩ー!」

きり丸の視界に入ってきたのは二年生の池田三郎次と川西左近。
トラブルメーカーのは組、しかもきり丸に呼ばれて二人は揃って嫌そうな顔をした。

「な…何か用かよ」
「あのーお願いがあるんすけど…」
「は組に付き合うとロクなことがないからなぁ」

そんな小言なんて気にせず、きり丸は背中から赤ん坊を離して二人の前につきだした。

「この赤ん坊を、俺が補習やってる間だけ預かってもらえませんか?」

突然の無理な願いに、はぁ?と声をあげた。
明らかに乗り気でない二人にきり丸は説得を続ける。

「普通の補習なら俺が見るんですけど、手裏剣の補習なんすよ…。赤ん坊をそんな危険な場所に連れていくわけにはいかないし…」

確かに、一年は組の手裏剣は狙った的に当たらないことで有名である。
間違って赤ん坊に当たったりしたら大変だ。

「まぁ確かに…危ないよな」
「左近!?」

やはり保健委員、人が傷つくのには黙っていられない。
左近が揺らぎ始めたのを、きり丸は見逃さなかった。

「お願いします!赤ん坊の為にも…」
「…しょうがないな…」
「ええぇ左近!?」

ありがとうございます!と言ってきり丸は赤ん坊を差し出した。

「じゃ、お願いしまーす!」
「おう」
「まじか…」

三郎次はまだ乗り気ではないようだが、左近は赤ん坊をしっかり受けとった。
左近の腕の中で赤ん坊は気持ちよさそうに眠っている。

「お前抱くの上手いなー!流石は保健委員」
「別に保健委員は関係ないよ。ていうか赤ん坊なんて抱くの初めてだし。」

ただ、なんとなく分かるだけ。と言いながらゆっくりと体を揺らす。
初めてとは思えない手慣れた様子だった。







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