新しい一年生が入学した。
八左ヱ門は三年生になり、委員会でも下級生の面倒を見たり上級生のサポートをする立場となった。
自分の所属する生物委員会にはどんな一年生が入ってくるのか、八左ヱ門は楽しみだった。

そんなある日、八左ヱ門は噂を聞いた。
「新一年生に、蛇を連れた変わった子がいる」
蛇を連れているということは、生き物が好きなのだろうか。
もしかしたら生物委員会に入ってくれるかもしれない。
八左ヱ門はその子のことが気になり始めていた。
「どんな子なんだろう」
まだ会ってもいないのに頭の中はその子でいっぱいだった。
そのことを級友の雷蔵と三郎に言ってみた。

「俺、噂になってる蛇連れてるっていう一年が気になるんだ」
「どうした八左ヱ門、一目惚れでもしたか?」
「違う!ていうか、まだ会ったことない」
「僕ら、その子見たことあるよ」
「本当か?雷蔵」
「うん、例の蛇と一緒に散歩してた、のかなあれは」
「完全に二人の世界だったなー。あ、一人と一匹か」
「あの間に割って入るのは至難の技だと思う…」
「ま、障害が大きい方が燃えるってもんだ、がんばれよ八左ヱ門」
「だから違うって…」


二人の見たその一年の様子から察するに、蛇と異様に仲がよいということが変わってると言われる理由なのだろうか。
とにかく会ってみないことには何もわからない、八左ヱ門はそう思った。

そのうち、その一年生は「伊賀崎」という名字だということがわかった。
しかしタイミングが悪いのか、なかなか出会えなかった。

ある時、八左ヱ門が生物の世話をしに小走りで飼育小屋に向かっていると、ある人物が小屋をじっと見つめているのに気付いた。
小さなその人物は、首に赤いマフラーのようなものを巻いていた。
それが蛇だと八左ヱ門が理解するまでそう時間はかかならかった。
そして瞬時に思った、この子があの伊賀崎なのではないかと。

八左ヱ門は走るのをやめ、ゆっくり歩いて伊賀崎に近付いた。
おどかさないように静かに隣まで歩み寄った。

「…生き物に興味があるのか?」
「!」

伊賀崎の肩が少し揺れたが、ゆっくりと八左ヱ門の方を向いた。
そこで初めて伊賀崎の顔を見て驚いた。
白い肌、長い睫毛に大きな瞳。
大袈裟にいうと、浮世離れしている顔立ちだった。
変な噂ばかり耳にしていたものだから、こんなに整った顔とは思いもしなかった。
伊賀崎は八左ヱ門がそんな感想を抱いたということなど知らず、暫くの沈黙の後「はい」とだけ返事をし、再び視線を飼育小屋へ戻した。
素っ気ない反応に八左ヱ門はどうしていいかわからず頭を掻いた。
しかし、一時だったが自分を見つめたあの大きな瞳を忘れることはできなかった。




お題:青二才。







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