「左近?何か言った?」
「な、何も言ってないよ」
その時、
「あ、三郎次くん、左近くーん」
気の抜けた声がした。
名前を呼ばれて振り向くと、その声の主は四郎兵衛だった。
「四郎兵衛…」
「その赤ん坊は?」
「あぁ、ちょっときり丸に頼まれて子守りしてるんだ」
「へぇー。なんか、三郎次くんと左近くん、お父さんとお母さんみたいだね!」
「なっ!!」
四郎兵衛の突然の言葉に左近は思わず赤面する。
しかし三郎次が悪乗りしてきた。
「だろ!俺たち夫婦みたいに見えるか?」
「うん、見えるよー」
「ちょ、馬鹿!三郎次!四郎兵衛に何言わせてんの!」
そうして騒いでいると、赤ん坊がぐずり始めた。
「あっ、ほら三郎次がうるさいから起きちゃったじゃん!」
「わわっごめん!」
左近はまた上手に赤ん坊をあやした。
すると赤ん坊の目はゆっくり閉じられ、再び眠りについた。
大声で泣き出す前に眠ってくれてよかった…と左近が安心していると
「な、今の見たか?左近めちゃくちゃ上手いんだぜ!」
「すごーい左近くん!」
「流石俺の嫁だよな!」
「何言ってんだよ馬鹿!!」
しばらくした後、きり丸が補習から戻ってきた。
左近は赤ん坊を返すのが少し名残惜しかったというのは秘密の話。