「いただきます!」
「いただきます」
手をパチンと併せてから、少し手に余る長さ(俺の手が小さいだけかもしれない)のフォークでスパゲティをつつく。
中学生には少しだけ早い感じのするカフェだったが、なんとなく自分たちは様になっているような気がした。
「いきなり誘って悪かったね。」
「いや、いいよ。隼総が来なかったら一日中寝てただろうから。」
「なら良かった。」
「ところで、なんでいきなりデートなんk」
「ねえ喜多くん。」
遮られた。
「他の人たちから見たら、俺たちどう見えると思う?恋人に見えるかな?」
隼総とは、何というか、そう言う関係だ。
いつからとか、どちらからとか、その辺ははっきりと分からなかったが、お互い好き合っていることだけは確かだった。
キスもフレンチなものしかしたことがないし、星降や西野空みたいに一緒に寝るなんてこともしていない(中学生はそうあるべきじゃないと、個人的に思う)。
デートで手を繋いだりも、恥ずかしいからあまりしたことがない。
「‥‥友達どうしに見えるんじゃないか?」
「だよね。」
隼総は苦笑した。
こう見えて、隼総はモテる。
プリンスなんて呼ばれていると言う噂も聞いた。
もし自分が女子だったら少し近寄りがたい(どこか女っぽいし、怖い)ような気がすると思うのだが、隼総と話しているとそんな女の子たちの気持ちも少しだけ分かるような気がした。
「そう言えば、体、もう大丈夫なのか?」
隼総は試合終了直後、倒れた。
「すまなかったな。一年のお前に負担をかけすぎた。化身、三回も出させて‥‥」
「謝るなよ。一晩眠りゃよくなるさ。今日はもう元気。」
「そうか!良かった」
隼総は少し含みのある、いつもの笑みを浮かべた。
「そ!元気元気!てことで、俺スパゲティお代わりするから」
「えっ三杯目‥‥!?」
(細い体でよく食べるな‥‥‥)
まあ、それもいつものことだった。
程なくして、スパゲティとデザートのアイスを食べ終わり、店を出た。
「喜多くん、どこか行きたいところある?」
「いや、特に。」
「そ。手、繋いでいい?」
本当は少し、照れ臭かった。
けど、なんとなく今日は手を繋いでやらないといけない気がした。
「う‥‥うん。」
「ありがとう」
自分の手を掴んだ隼総の手は、自分のよりも一回り大きかったが、意外と握りやすかった。
「じゃあ喜多くん、俺に付いて来て。」
半ば引っ張られるようにして、隼総と共に歩いていった。
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