毛玉は俺からケーキを受け取ると、元気に生徒会室へ突撃して行った。
そんな彼の姿に、どうしても不安が拭えない俺は、そっと生徒会室の扉に耳を押し当てた……すると、微かに2人の会話が聞こえる。



「なぁなぁなぁ、ケーキ貰ったんだ!!一緒に食おうぜ!!」

「……ケーキ?一体誰からだよ。」

「んーさぁ?名前訊くの忘れてた!ケーキが良い匂いしてたからさ!」

「ああ゛?んな誰からか分かんねぇもん食うんじゃねぇよ。ケーキなら俺様がいくらでも食わしてやる。」

「大丈夫大丈夫!!あいつは良い奴だ、絶対!!それにこれ、お前にって渡されたんだぞ?食わなきゃ失礼だ!!」

「……俺様に?ハッ、そんなの尚更怪しいじゃねぇか。」



毛玉ァァァアアア!!
会長に怪しまれてんじゃねぇか!!
これ絶対、食ってもらえねぇよ!!



不穏な流れに、拳で扉をガツガツ殴りたい衝動をグッとこらえる。
存在がバレた瞬間、俺が会長にガツガツ殺られる……なんとなくだが。



「ああもうっ、面倒くせぇな!お前が食わないなら俺が食う!!」

「おい!!止めろって言って、」

「〜っうめぇ!!うめぇよこれ!!なぁなぁなぁ!!やっぱりお前も食ってみろよ!!大丈夫だから!!」

「…………チッ、仕方ねぇな。」

「……どうだ?美味いだろ?」

「…………まぁ、な。」



毛玉ァァァアアア!!
ありがとう、本当にありがとう!!
さっきは疑ってゴメン!!



ケーキを無事に食べてくれて、俺はホッと胸を撫で下ろす。



「なぁなぁなぁ!!もっと食いてぇな、このケーキ!!また焼いてくれねぇかな、あいつ!!」

「……さぁ、どうだかな。」



その会話を聞き終えると、俺はルンルン気分で寮へと戻った。



――――――――――



それから数日、俺は何度か生徒会室へ菓子を届けている。
これは俺の勝手な想像だが、会長は結構な甘味好きだと思う。
だからこうして歩み寄って行けば、いつか打ち解けれると思うんだ!!
そんな事をつらつら考え、生徒会室へ向かう途中、会長と出くわした。
一瞬、2人の視線が交わる……――



丁度良い!菓子を渡そう。
会釈だけで菓子は後回し。


 
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