PoL

introduction


 白いカーペットに緑色の長い一本の髪の毛が落ちている。
 さりげない自己主張がこの部屋にチリちゃんが住んでいるのだと私に囁いた。

 私しかいなかったはずの1LKの部屋。
 そこに当たり前のように存在しているたった髪の毛一本に嬉しくなるのは、自分じゃない誰かに好かれるのがこんなに嬉しいことだと教えてくれたからだ。

 この部屋に落ちた髪の毛のように、何もかもを手放して真っさらだった私の心にチリちゃんはいつの間にかするりと深く入り込んで根づいてた。


 恋慕というには実を結ばないこの徒花を、今日も今日とて私は大事に大事に抱き締める。

- ナノ -