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耳が早い人




「隣いいかしら?」

ジム戦が終わり、ジムのロビーでビオラさんを待っているところだった。カロス地方一つ目のバグバッジをケースに嵌め込み、暫くじぃっと眺めていると、エリキテルを連れたパンジーさんがやってきた。

少し片側に寄って「どうぞ」と言えば、軽く笑みを浮かべてソファーに腰を下ろした。


「あの受付に置いてある写真の子、どんなバトルをしてましたか?」
ハンナが問えば、パンジーさんは「ああ、」と一息おいて続けた。

「サトシ君のことね。なんていうか、こう…勢いとガッツで行くって感じだったわね。一度負けたけど、起き上がるほど強くなってくような。」
「そっかあ。変わらないなあ…」
「変わらないってことは知り合い?」
「はい。イッシュ地方で一緒に旅をして回ってたんですよ。私は途中でシンオウに戻りましたが。元気そうでよかった」

ハンナに興味を示したエリキテルが、パンジーの肩からハンナの頭の上に飛び移ってきた。落とさないように姿勢を正すと、今度はパンジーさんから口を開いた。


「私もハンナちゃんに聞きたいことがあるの。いい?」
「え?なんでしょう」
「あなたさっきシンオウに戻ったって言ってたけど…
つい最近のことよ、シンオウリーグの四天王防衛戦で優勝したハンナって子がいるんだけどね。それあなたのこと?」


頭に乗っかったエリキテルがズレ落ちた。

「こんな遠いカロスまで情報って来てるもんなんですねえ…」
少し照れ臭そうに、ふやけたような声でそう答えるとパンジーは腕を組んで少し考え込んだ。


「やっぱりそうよね。どこかで見た顔と名前だと思ったのよ。でもなんでカロスに?今度はチャンピオンリーグ戦があるんじゃないの?」
「大丈夫。チャンピオンリーグまで間が空いてるんですよ。」
「え?普通一週間後とかにあるんじゃなくて?」
「シロナさん…ああ、チャンピオンとは昔からお互い知っていたせいもあって…シロナさんすごい気合入れてて。全部片付けてから思い切りやりましょうってことで少し間が空くことになったんですよ。周りの反発凄かったみたいですけど…」


(カシャッ)


「いい横顔じゃない!姉さん、この写真使う機会あったら使っていいわよ!」



「ビオラさん盗撮って言葉知ってますか」
「いいじゃない減るものじゃないし。」

スっと椅子から立ち上がったハンナが今の写真のデータを消そうとビオラの手の中にあるカメラを掴み、負けじとビオラが奪われまいと手の甲の筋が浮き彫りになるような力で互いに顔に笑みを貼り付けて奪い合いをしている。


「それはそうとハンナ、この後はショウヨウ方面に向かうんでしょう?」

奪い合いに負けて息切れするハンナにビオラが問うと、「ああごめん、呼び捨てで呼んじゃった」とビオラ目が合った。

「私のこともビオラでいいわよ。多分サトシ君たちと同じ方面に向かうんじゃないかなって思ったんだけど違った?」
「いや、サトシ達とは合流する予定はないけどショウヨウには向かいますよ。」
「あれ、合流しないんだ。一緒に旅してたんでしょ?」
「さっきの会話盗み聞きしてたのー!?」
「いいじゃない!減るもんじゃないし!もう、話の腰を折るんだから。
話の続きだけど、私もショウヨウ方面に向かうからよかったら一緒に行かない?」


突然のお誘いに、ハンナは目を白黒させた。ジムリーダーが一緒に来る。イッシュで見たこのパターンがまたやってくるとは思わなかった。一息おいて、ハンナの答えが出た。

「喜んで!」





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久々のあとがき :四天王突破の話は後日書く予定です。(2014/4/17)


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