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ハクダンシティ


サトシ達がハリマロンを迎えてミアレから出発した後日。
悩みに悩んだ末これから向かう行き先はハクダンシティに決まった。距離は思ってたほど遠くなかったみたいで、スクーターに乗れば本当にすぐの道のりだった。

ハクダンにつけばスクーターから降りて、手で引きながら辺りを眺めながら赴くまま歩いた。


「おお…」

思わず感嘆の声が漏れた。ロゼリアの巨大な噴水の出迎えに、ハンナの足が止まる。石でできたロゼリアの両腕には、見たことのない鳥ポケモンが2匹、互いに毛ずくろいをしている。

『ヤヤコマ。コマドリポケモン。人懐っこい性格。美しい囀りと尾羽を振る動きで仲間に合図を送る。』

「これ絶対プラターヌ博士図鑑ボイスの設定で遊んだでしょ!」


せっかく初めて図鑑を開いて見た感想がこれで、若干画面越しに見えるヤヤコマが何とも言えない顔でこっちを見てきている気がした。
イカンイカンと図鑑を仕舞い両手の平で頬を叩いた。観光で来てるんじゃなくてジム戦をしに来たんだと言い聞かせて、タウンマップでジムの位置を確認する。いや、観光はジムが終わってから…と思えば現在地からジムはかなり近いことに、ハンナの真後ろに位置していた。

「ん?え?…あ、ここか!」


パシャッ

不意に聞こえたシャッター音。「んー!いいんじゃない、いいんじゃないの!」と声のした方を見ると女性が一人盛り上がっている。
呆然とするハンナと目が合い、「あはは、ごめんね」という謝罪と共にこちらへ歩み寄る色素の薄い女性は、カメラを構えてハンナを見つめる。

「あまりにもいい驚き方してたから思わずシャッター切っちゃった。」


はい、とカメラのフォルダから今の写真を見せてもらうと、よくある漫画にありそうな驚き方だと自分で驚いてしまった。

「自分がこういう表情するってなかなかわからないから驚いたでしょう?さっきから見ててあなたすごく表情がコロコロよく動くから思わずね。あなたこのジムのチャレンジャー?」
「そう…ですけど…、あなたは?」
「私はビオラ。カメラマンをやってるの。このジムに挑戦するなら早いうちがいいかもね。ここのジムリーダーは明日からまたジムを留守にするみたいだから」
「え!?そうなんですか?じゃあ今すぐ行きます!ビオラさん、ありがとうございます!私ジム戦終わったらポケモンセンターに寄るんでさっきの写真ください!またあとで!」

呆然としていたと思いきや、ビオラの話を聞くと一転して慌てたようにジムへと駆け込んで行くハンナの後ろ姿を見送ったビオラは、ジムの前に一人立ち尽くしていた。



「まあ、私がジムリーダーなんだけど」

“というか、この写真、欲しいんだ”
あの子案外自分のこと大好きだったりするのかな?


「…ジム戦の間に現像しておかないとね」

これから始まるジム戦に備えて、パンツのポケットいっぱいに入ってるフィルムを取り出し、首からぶら下げた一眼カメラのフィルムを新しく付け替えたビオラは裏口から回って、ジムの中へと入っていった。




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