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ご褒美



「そうか〜サトシ君たちと会ったんだね。ンン〜、いいねこういうの。運命感じちゃうね。」
「相変わらず緩いですね博士…これソフィーさんからです」
「うん、ありがと。」

あれからシトロン宅でパーティーに誘われたのだが、さすがにプラターヌ博士に何も言わずに帰りが遅くなるのも悪いと思い一旦研究所に帰ってきた。

「このあとシトロン君たちとまた合流するんだよね?」
「そうですね。あまり長居はしないつもりですが…それとさっき渡したソフィーさんからの資料をチラッと見たんですけど私って輝きの洞窟と映し身の洞窟が担当になるんですか?」
「そのつもりだよ。あのあたりはポケモン無所持のままの調査が難しいし、この研究所でバトル慣れしてる人ってあまりいないしね。僕に至っては弱いからあの辺は結構敬遠しがちだったんだよね。ハンナはシンオウで鋼鉄島とかサバイバルエリアとか行き来してたなら多分楽勝だと僕は考えたよ。そのうちまた違うところも調べてもらうけどね。」
「そういうことですか…リザードンは大抵の野生ポケモン相手なら余裕で勝てるだろうし、ヒトツキがいるし岩タイプの集団がやってきても大丈夫だとは思います。鍛えられますしね」
「タフだね〜〜〜!!!流石だよ〜!そんな君に調査が終わったらご褒美にこれを渡そうと思う!」

そう言って立ち上がったプラターヌ博士の胸ポケットから出されたものに思わず私も驚き、リザードンもボールから飛び出してきた。

「そ、それ、リザードナイト…ですよね…?」
「そう。リザードナイトにはXとYの2種類があるんだけど、これはそのうちの片方。どっちかは使ってからのお楽しみ」

そう言ってプラターヌ博士は再びポケットへそのご褒美を戻してしまった。

「嬉しいですけど…ご褒美って…」
「その方がめんどくさい調査も捗るだろう?大丈夫。食べたりしないから。
それと野外調査と一緒にジムバッジも手に入れるって目的もつけたらもっと捗るんじゃないかな〜?ハイ、バッジケース」
「プラターヌ博士私の扱いうますぎませんか!?ナンパは連敗中なのに!ナンパは連敗中なのに!」
「ンン…なんか言ったかな…」
「きっと幻聴です」
サラっと誤魔化しつつ、バッジケースを開くとやはり個々でご丁寧に変な形をしている。唯一なんとなく予想のつく8番目の穴は氷タイプのジムだろうが、その他が全くわからない。4番目は草タイプのジムと聞いていたのだけど、どう見ても水滴の形をしている。7番目に至ってはなんだこれ状態である。

「さ、見るのもいいけど行ってきなよハンナ。あまり待たせるのも悪いでしょ」
「ヤッバ、そうですね…!そろそろ行かなきゃ」


リザードンをボールに戻し、小走りでドアへ駆けていく途中「忘れてた、」と思い、足を止めてもう一度博士の方へ振り返る。博士の背後にはさっきまでいなかったはずの口元にポケモンフーズの食べかすのついたガブリアスが私に笑いながら手を振って見送ってくれていた。

「行ってきます!」
「うん、いってらっしゃい!楽しんで!」


あたりはもうすっかり暗くなっていた。
街灯が照らす夜道を原付で研究所からシトロン宅へ向かう道中、ハンナはプラターヌ博士「僕に至っては弱い」と言っていたことを思い出していた。
あんなことを言っていたけど、実際あのガブリアスを見るとどうしてもそうは思えなくて。それに、進化を研究する上でほとんどのポケモンには欠かせないレベル上げの工程もあるのに。自身がそうだったが、ガブリアスのようなドラゴンタイプのポケモンはとくに進化の過程が長くて、火力はあるし強いもののそれこそものすごい時間と労力がかかるのだ。

「ただのナンパ連敗の優男っぽい感じの博士だと思ってたんだけど案外そうじゃないのかもな〜」
ほんの少しの時間ではあるが、少しプラターヌ博士を見る目が変わった小休息だった。


考え事をしているとあっという間で、シトロン宅はもうすぐ目の前。
千切れんばかりにこっちだと両手を振るユリーカちゃん達に迎えられた。
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