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噂をすれば影がさす


「ところでサトシ、そこの可愛い子は?彼女?」
「かっ 彼女!?」

リモーネさんとデンリュウの紹介が終わったところで、サトシの肩から飛び移ってきたピカチュウを受け止めて「久しぶり」とこの毛並みにほっぺの感触を味わいながら撫でていた。髪を切ってから結わないせいでピカチュウから発生する静電気で髪が逆立ち始めてしまう。地面へ下ろしてあげたところで、突然過ぎるサトシと私の会話に困惑するピンクの帽子が印象的な女の子と目があった。
そして冒頭。いきなり名前聞くのもなんだかつまらない。面白半分で彼女かと聞いてみれば、サトシが答えようとしたのをうわずった声で遮って驚いていた。

「ちち、違います!私はサトシと一緒に旅をしてるだけで…」
「ははは、わかってるわかってる。サトシそういう色恋には才能レベルで疎いからね〜!君名前は?」
「せ、セレナです」
「ほお〜…こんなべっぴんさんがシトロンの友達とはなあ〜隅に置けねえなあ」

リモーネさんに軽く肘で小突かれてるシトロンをよそに少し照れるセレナを見て、なんだろう、シゲルは理由があるとはいえ元々結構女慣れしてるし、サトシに至っては恋愛の「れ」の字も知らない、アイリスはザ・野生児だし、私の周りの年下の子にこんな可愛らしい反応する子がいないからものすっごい新鮮だと感じてしまう。


「ハンナさん、さっきプラターヌ研究所でお世話になるって言ってたけど…」
「ああ〜それね、そうだよ?最初は息抜きにカロスに来たんだけどこっちに来て新しい研究テーマ見つけたからしばらくナナカマド研究所じゃなくてプラターヌ研究所を中心に活動しようってね。」
「研究者ってことかぁ…なんかかっこいいなあ…でも見た感じそんなイメージないかも。白衣着てないからかな?」
「いつも白衣着てるわけじゃないよ?」

まあ研究者って言われてイメージするのは白衣にメガネにいろんな研究機材だとは思うけども。そっか、と笑うセレナとやっぱそう思うよなと言うサトシを見てイッシュの旅を思い出す。アイリスとデントは今どうしているだろう。

「あ、そうだ」
思い出したようにリモーネさんがシトロンに振り向けば、ギクリと触れられたくないものから守るように背を向け、「たまにはうちにも顔出せ」とリモーネさんが追いかけるように正面からシトロンに問えば、またもやギクリと
驚いては背筋を伸ばして、なんて言い逃れをしようかと考えるような素振りをしては押し黙ってしまう。

“さすがにあの態度だと親になにか疑われてもしょうがないんじゃないの〜?”と、でもちょっと見てて面白いせいか少しだけ笑ってしまう。


しかしシトロンの沈黙を打ち破るように、ユリーカちゃんがその場を後にしようとリモーネさんを振り切った時、リモーネさんが発したその言葉にその場の全員が固まった。




「何度も言うようだが、チャレンジャーに厳しくするのはいいが厳しいだけじゃいいトレーナーは育たない」


“…なんかこの口ぶり、まるで”

まるでシトロンがジムリーダーみたいな口ぶりじゃないか。

でも、今出回ってる噂だと旅をしてるはずのサトシと一緒にいるシトロンとは矛盾が生じる。それにあんなひどい噂の主のような性格には見えない。


「頼むぞ、街が誇るミアレジムのジムリーダー」

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