xy

ミアレシティ ‐発見‐


「なるほどなあ!ハンナちゃんみたいな華奢な女の子だとこの街回るのはそりゃあ疲れるはずだ!」
「これからフィールドワークも多いと思いますし、それでリモーネさんの原付見てこれだって思ったんですよ。本当、乗せてもらっちゃってありがとうございます!」
「フィールドワークって野外調査ってことだろう?ハンナちゃんもしかして学者さんかなにかかい?」
「ただの研究員の端くれですよ〜今日からプラターヌ研究所にお世話になるんです。」

道中たまたま捕まえたおじさんとデンリュウ。ギリギリアウトな三人乗り。おじさんはリモーネさんという名前みたいだ。原付の後ろに乗せてもらって向かっているのは原付を売っている中古屋。この広いミアレシティの移動を始め、ミアレ郊外や他の街に向かう時にあったら便利だろう。私の場合だと特に、イッシュを旅をして以降室内で行う研究より野外調査に駆り出されることが圧倒的に多いから歩く以外の足が必要になるのは明らかだった。
プラターヌ研究所の倉庫に置かせてもらおうかな、と考えながら流れる街の景色を見ていると突然リモーネさんが原付のスピードをグンと上げ始めた。

「ちょっとだけごめんな、俺の子どもらしき子達を発見したからちょっと寄らせてくれ!」
「え!?あ!どうぞどうぞ!」


どの子がリモーネさんの子どもなんだろう。イメージ的に、屈強なリモーネさんだから腕っ節が強そうな子なんじゃないかとか、そんなことを考えているとあっという間にその子ども達のところへたどり着いたみたいで、歩道へと近づいていく。

「シトロンにユリーカじゃねえか!」
「パパ!?」
「デンリュウ!と誰…?」


「この子達が!?リモーネさんの子ども!?お母さんの遺伝子強いですね…」
明るい金髪に、少し抑え目な青い瞳。茶髪で髪と同じ色の瞳のリモーネさんには全然似てないけど、2人とも年相応な感じがすごく可愛い。

「ああ!こっちのメガネが俺の息子のシトロンに、こっちの小さいのが娘のユリーカ!可愛いだろう!」
「パパ、この方は?」
「さっきそこで会ってな。中古屋に連れて行って欲しいって言うから乗せて行ってる途中だったんだ」
「初めまして、シトロンくんにユリーカちゃん。私はハンナ。今日からプラターヌ研究所にお世話になることになったんだ」

よろしくね、と原付から降りて挨拶をすれば、座っていたせいでわからなかった身長差が明らかになって、少し威圧感があったのだろうか。ユリーカちゃんはシトロンの腕にしがみついている。



「ハンナさん…?」



「ん?」
そういや、この場にいたのはシトロンくんとユリーカちゃんだけではなかったが、「ハンナさん」と呼ぶ声がどことなく懐かしい。顔を上げると、その声の主と目が合い、「やっぱり!!」といつも聞いていたあの大きな声で、私に向かって歩き出す。


「もしかして、サトシ…?」

突然すぎるこの偶然。シンオウ、イッシュときて、カロスまで会うとは思っていなかったから。



「そう!久しぶりハンナさん!イッシュ以来だな!」



変わらない風貌に、常に連れているピカチュウ。
そうか、この子達もまた新しいスタートを切ったんだな。
- ナノ -