xy

ミアレシティ ‐探索‐


「施設案内はこれで全部かな。なにか聞きたいことはあるかい?」
「大丈夫デス…」
「まあまあ…そう気を落とさないでハンナちゃん。フラべべはちょっと驚いただけだからまた構ってやったらいいわ」


あの後、フラべべと笑いあった直後のこと。どこからどう見ても微笑ましい場面だったと思う。確かにあの時私とフラべべは互いに仲良くなろうとしていたのだ。

フラべべと指先で握手を交わした瞬間。
「ハ…」
「?」

「ハッックショイッッ!!!!!!」


フラべべから見たら、ただでさえ身長がでかい私は更にでかく見えるだろう。その私がそのフラべべの目の前で盛大にクシャミをしてしまったのだ。そういえばカロスは今暖かい気候で、ちょうど花粉の舞う時期だった。単にそれが悪いとは言えないけれど。
突然のクシャミに驚いて逃げてしまったフラべべはそのまますごい勢いで温室へと帰っていった。やってしまったと頭を抱える私をよそにその場にいた研究員たちは笑いをこらえて私を立ち直らせようと料理を勧めてくれたのだが、今度は私の見た目と食べっぷりの良さのギャップに食欲大魔神とまで言われる始末。
男の研究員達には謎の衝撃を与えたようで、今度おすすめの大盛り食堂を教えてあげると言われたのだ。嬉しいけど普通レストランやカフェじゃないのか。

「そうだ、ハンナ。ミアレシティはもう堪能したかい?」
「まだです…」
「じゃあ気分転換に見てきたらどうかな?ここは広いし、毎日見ても飽きないんだ。路地裏にはバトルを仕掛けてくるトレーナーもいるけど。」
「…そうですね、さっき聞いたジムも気になるしちょっとそのへん回ってきます!」
「そうそう!笑って笑って!いってらっしゃいハンナ!」
「帰るときは研究所の場所を聞けばみんな答えてくれるからね。」

「わかりました!いってきます!」




「広いのは知ってたけどさ、ミアレシティ舐めてたわ…」
公共広場のベンチに腰掛けてゼェハァと荒げた息を整える。プラターヌ研究所から一直線でプリズムタワーまで目指したのだが、放射線状になって長く見えるこの広い大通りは目の錯覚以上に長いのだ。しかもどこのお店も洒落ていて思わず目移りしてしまい、そのせいでなかなかたどり着けない。
加えて体力不足であるから余計に疲れる。

「流石にリザードンこんな距離で空を飛ぶこと頼まれたくないよな〜…」


ここまでの大都会、これから大丈夫だろうか。
そう思った時、目の前を通り過ぎた一台の原付。ツナギを着たおじさんと、後部席に乗っかるデンリュウ。


「そこのデンリュウを連れたおじ様!!」
「?」

これだと確信した。振り返ったおじさんとデンリュウは自信に満ちた私の顔を見て、「なにかしたっけ?」と言いたげな顔で顔を見合わせていた。

- ナノ -