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噂のあの子


シゲルから聞いていた"色男"。噂なんて宛にならない、そう思っていた時期が私にもありました。
さらりとナンパから仕事へと切り替えた博士に手を引かれサウスサイドストリートにある研究所へ向かっていた。

「…プラターヌ博士、ここまで研究所破壊されるとか一体どんな女を引っ掛けたんですか。」
「それは大きな誤解だよーちょっと最近アクシデントがあってね、話せば長くなるから割愛するけどガブリアスが暴れたんだ。テレビで見なかった?」
「いや、ひたすら始末書書いてたからそんな暇は…」
「始末書?」
「なんでもないです。」


プラターヌポケモン研究所。街の中にあるせいか、見た感じ規模はナナカマド研究所よりだいぶ小さいけれど案内板を見ると機材環境は充分すぎるほど充実しているように思える。ただ玄関ホールに似合わない瓦礫の山に、横一線に抉れた壁。ガブリアスが暴れてこの被害で済んだのは不幸中の幸いだったと言うが、そんなに危なっかしい実験をガブリアスにしていたのだろうか。
少しハンナの顔に陰りが見えたことに気づいたのか、誤解を招いたとでも思ったのか、改めて騒々しいホールに目をやって眉を垂らしたプラターヌ博士が口を開いた。

「いきなり変な輩が来たと思ったら奇妙な装置でガブリアスが暴れだしてこの有り様さ。これでもだいぶ片付いたんだ。」
「変な輩が、ねぇ…」

だめだ、変な輩と聞いてロケット団が真っ先に浮かんでしまった。カロスにいるわけないのに。


「まあ、この話はこの辺にして今更かもしれないけど改めて自己紹介させてもらうよ。

ボクはプラターヌ。このポケモン研究所を拠点にメガ進化について研究をしているんだ。ナナカマド博士には昔お世話になっていてね、シロナは僕の兄弟弟子なんだよ。」
「シロナさんと!?」
「そう。だから君ともある意味でボクと兄弟弟子でもあるんだ。君のことは2人からよく聞いているよ、ハンナ。」
「そ、そうだったんだ…」

カルネさんが私の話を聞いたというルートはそういうことかと妙に納得してしまった。


「フィールドワーク中にジムに挑戦して肝心の調査を忘れて喜んで帰ってきて怒るに怒れなかったって話がボクの中でも一番印象に残ってるかな」
「ちょっとそれ誰から聞いたんですか!?」
「ナナカマド博士」
「博士ぇ…いらんことを…」

初っぱなから頭を抱えるとは思ってなかった。ナナカマド博士は強面だけどこども好きだから電話でスクールのこどもの話をする様子はよく見ていたけど、まさか自分のことまで入っていたとは

「寄り道多いしドジを踏むことが多いけど過酷な環境地帯の調査のときは助かってるとも言ってたよ。バトルもずば抜けて強いとも。
ナナカマド博士から君の話を聞いたり君の論文を見て会えるのを楽しみにしていたから今とても嬉しいんだ。

ようこそプラターヌ研究所へ、ハンナ。研究員一同、君を歓迎するよ。」


案内された部屋には研究所の人達やガブリアスを初めとしたポケモン達が、ハンナを出迎えていた。

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