番外

ラッシュその1


「ハンナ、そろそろ行こう」
「はいはーい
じゃあエーフィ、ブラッキーお留守番よろしく!行ってきます!!」


シンオウ地方マサゴタウン・ナナカマド研究所
シゲルとハンナの2人はフィールドワークのため研究所を後にしたのだが、ナナカマド博士をはじめとした研究員は皆出払っていたためハンナのエーフィとシゲルのブラッキーに留守番をしてもらうことにした。
エーフィはジョウトの時にもらったイーブイから進化した子だ。何年も一緒に旅してきたため、ブラッキーとも互角に戦えるしそれなりに強い。


───かなり頼れる子だから警備も大丈夫だろう。



そう思っていたのだがハンナとシゲルがいない間にとんでもないことが起きていた。

元々そんなに大掛かりな調査ではなかったため難なく終わり、研究所に帰り、シゲルはナナカマド博士に連絡をしに転送器のある部屋へ行き、ハンナはさっそくエーフィとブラッキーにご褒美のポフィンをあげようと研究所にあるシゲルとの相部屋に向かった。

「エーフィブラッキーただいまー!いい子にしてた!?

…あれ」



ふと目についた机の上に置いてある紙の更に上に置いてある結構な重みのある楕円形の丸い物体
「なにこれ…私こんな文鎮持ってないよ」

紙は置いた覚えはあるがこの丸いやつを置いた覚えもない。
ずっと部屋にいたエーフィとブラッキーなら何か知ってるかもしれないと振り返ると二段ベッドの下段に2つのまたもや丸い物体

「え…なに?なんなのこれ」
ベッドに近づこうと一歩踏み出そうとしたらつま先に何かが当たった。




「また!?」
やっぱり丸い物体だった

一体何個あるんだと四つん這いになってベッドの下を覗いたり上段のベッドを見たり机の下を隈無く探したが結局この4つのみだった。
その様子をずっとエーフィとブラッキーは見ていた。


「…文鎮にしては不安定すぎるよね…」
手に取って置いたらゴロゴロ転がる丸いそれ


まるで卵みたい…


……………。

………



「いやああああああシゲルシゲルシゲル!!!!!!」


バンッと大きな音を立ててドアを蹴り飛ばしてハンナが絶叫とともに一目散に部屋を後にした。


『ム…シゲル、ハンナ君が呼んでいるようだが?』
「はぁ…徹夜明けなのになんであんなに元気なんだか…」

「ちょっとシゲル聞いて!!!!」
「はいはい聞こえてる。どうしたの」
「どうしようできちゃった!!」

「ブッ」


は!?と思わず吹き出してしまった。
ナナカマド博士が白い目でこちらを見ている、待て、いつ僕がハンナを襲ったと言うんだ


『お前達まさか…』
「違いますよ博士!!いくら相部屋だからって僕まだ10歳ですよ!?ハンナも何言ってるんだよ!!」
「違うよ本当だって、4個もできてて…」
『…………(4個?)』
「ハンナ!!博士が無言になったからそろそろ冗談やめて!そもそも何ができたのさ!?」


「え…あ、卵」



「…………」
『…なんだそういうことか』
画面越しに博士が髭を指先で撫でながら納得した

「ハンナ…」
「何?」

「…そういうのは最初に、
言えええええええええええ!!!!!!!」


ハンナも博士も
初めてシゲルがキレたところを見ました。







なんとか誤解を解いて2人は部屋へと戻っていった。部屋に入れば確かに4つの卵がそこにあった。とりあえず2人ともベッドの下段に腰かける。それから思い出したようにハンナが二匹にそれぞれ好みのポフィンをあげていた。(なんで普通の料理が作れなくてポフィンが作れるんだ…)まあポケモン達には好評だからいいとして…

(ブラッキー…僕らがいなかったからって警備もそっちのけてなんてことを…)
まあポケモンの間にそういった行為は無いというけれど。

「それにしても…エーフィあんた控え目な性格して4つって…」
ハンナが濃い青色のポフィンを与えながら呟いた


゛あんたら元々仲が良かったけどリア充の勝ち組じゃないすか…゛
と言えば得意のドヤ顔。(地味にイラッとするなあ…)美味しそうにポフィンを頬張るエーフィ。今エーフィが食べてるのと同じポフィンを前に少しかじってみたけどあんな渋いのよく嬉しそうに食べるよねえ…



「でも卵4個もどうしよう…」
「ハンナは今イーブイ系統の進化について調べてるんだから悩むことないじゃないか。近くで見ることでわかることも多いんだからさ」
「いいの?」
「断ることなんてないだろ?ハンナのエーフィと僕のブラッキーの子なんだから」


(なんか言い方があれだけど…)
「じゃあ大切に育てさせていただきます」
そうと決まれば進化の石が必要になる。石はこの前目覚め石をユキメノコに使ったので最後だ
そもそも目覚め石はイーブイに使えないからどっち道石を調達しに行かなきゃいけない。石と言えばあの人しかいないだろう、たしか今はリゾートエリアで別荘を構えてたはずだ。
よし、と立ち上がったらゴツッと上段に頭をぶつけた。痛みに頭を押さえてしゃがみこんだ



゛ハンナ、いい加減学習しよう!゛
゛大丈夫大丈夫こう見えて石頭だから…゛
゛思いっきり痛そうに頭押さえてたけど゛


「ちょ…ちょっとリゾートエリアに行ってくるね」
「え、なんで」
「この前勝負処行った時にダイゴさんに会ってね、リゾートエリアに別荘建てたんだって聞いたからもしかしたら石もらえるかもと思って。」
「それなら明日でもいいんじゃない?ハンナ徹夜明けなんだから」
「ダメダメ。ダイゴさん結構あちこち移動するから行けるときに行かなきゃ!じゃ、行ってくる!」


エーフィも行く?と聞けばまだ卵と一緒にいたいようだったから置いていくことにした。(別にバトルしに行く訳じゃないから手持ちはフルじゃなくていいか)


白衣を脱いでシャワー室に向かいいつもの服に着替え、研究所の広々とした草地にボールから相棒を出してリゾートエリアへ向かった


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