番外

はじめましてとセクハラです


※ナギサのジムリーダーの続き



"見ない顔だな"


あくびをこらえて放った最初の一言がそれだった。徹夜でもしていたんだろうか、目の下にうっすら残ったクマが目つきの悪さを際立たせている。
けど、顔立ちがいいせいか多少目つきが悪くても悔しいが格好良い。



「バクの紹介でな、さっき初めて来たところなんだよ」

そういやオーバはこの"デンジ"って人とは幼馴染なんだったっけ?と少し前の記憶を漁っていると、「もしかして前にオーバが言ってた見込みアリだとか言ってた女だったっけか」と、身に覚えのある一言が耳に入った。
まさかオーバがそんな話を彼にしてるとは思ってもなくて。目の前で進む自分の話をポカンと聞いていたら、ズンズンとこちらに近づいてくるではないか。

ちょっと腕を伸ばせば、彼にぶつかってしまいそうなほど近く。
普段でもゲンやシゲル以外にこんな至近距離まで男の人が距離を詰めてくることなんてなかったから、僅かにたじろいでしまう。
視界の端に映るゲンに目線で助けてと訴えてみるも、ニコニコとまるでこの場を楽しんでるようで全く通用していない。



相手は自分よりも年上で、真顔でジロジロと見られて、さすがに気まずい事この上ない。居た堪れなくなってハンナが1歩後ろへ下がると、デンジはもっと詰めてくる。
"なんだコイツ"と思った矢先、肩を掴まれてグッと引き寄せられた。



「!?」
「身長でかいな、何歳だ?」
「〜〜っわざわざこんなことしなくても普通に聞けばいいでしょ!?」

隣から聞こえる笑い声の主はオーバとゲンのもので、「ハンナはまだ未成年だぞ」と笑い混じりに答えていた。突き放そうにも男の力は女の比ではなく、余裕の表情を全く崩さずにハンナを上から見下ろしている。



「だろうなぁ。20歳にしては顔が幼いし、うぶっぽい反応してるからそうだろうと思った」
「私は寧ろハンナはいつも研究とバトルばかりしてるから普通の女の子の反応してホッとしたよ」
「顔赤いぞ〜」



"人が黙ってりゃ好き勝手言いやがってオッサンが!!"







この直後、タイミングよく現れた女子軍により、ようやくデンジから解放されたのだった。
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