プロローグ
──ここがイッシュ地方か…
(数日船に揺られたもんだからみんな体がなまってるだろうな)
シンオウのナナカマド博士からアララギ博士宛ての届け物を頼まれて、はるばるイッシュ地方に来たのはいいが、頼まれる前日に鋼鉄島に呼び出しの用があったため博士に頼まれた時の元気な返事とは裏腹に体は疲れきっていた。
しかしイッシュにはシンオウやカントー、ジョウトにはいないポケモンが生息してると聞いて私の好奇心が高まらないはずがなかったのだ。体は限界だけど心は元気というやつで、気力だけで無理矢理体を動かして遠路はるばるこのイッシュ地方にやってきた。
「リザードン出てきて!」
空にボールを投げれば光と共に相棒が出てくる。が。
…パキパキと見せつけるように関節を鳴らす相棒は少しダルそうで、心なしかいつも以上に目つきが悪い。
そう、私は疲れきっていたのだ。だから船に乗って部屋に行き、ポケモン達とご飯を食べ、あろうことかそのまま寝てしまったのだ。
イッシュ地方に着くまでの時間をずっと。
水平線や景色を見ることなく、到着の船内放送がアラームになってしまったのだ。だから船内にいたトレーナーともバトルを一戦もしなかったのである。
基本的にバトルが好きなリザードンは暴れ足りないようだ。他の手持ちの子もリザードン同様暴れ足りないみたいで、ガタガタと震える5つのボールがそれを物語っている。
腰のホルダーから伝わる震動。
ボール同士がカチカチと当たって耳につく音。
──なにこれこわい。
「ごめんってリザードン、イッシュにはジムやバトルクラブがあるみたいだから届け物渡し終わったら行ってみようよ」
それを聞いてリザードンの目の色が変わった
さっきまでのわざとらしい仕草から一変。さっさと届けようぜ、早くしろよと言わんばかりに背中を向けてきた。気まぐれもここまでくると、なんだかしょうがなく思えてしまう。
「まぁアララギ研究所はカノコタウンだしここから近いから、さっそく行こうか」
そうしてハンナ達はイッシュの一歩を踏み出した。