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ライモンジムにて





「ハンナさん相当緊張してるのかしら…」
「昨日の今日だからね…そっとしておこう」

サトシ対カミツレのジムバッジを賭けたバトルが終盤に入っている。
サトシがカミツレの切り札であるシビシラスに苦戦するなか、ハンナはただフィールドにだけ目を向けていた。
目の前には雑誌で見慣れた女性の憧れカミツレさん。
やっぱり雑誌では味わえない圧倒的な存在力だなと実際に見てて思う。
声をかけれるチャンスがこのあとあるのだから、その時にぜひ聞きたいことがある。


「カミツレさん…」

「?、カミツレさんがどうかしたの?」
「どういう生活したらあんなスタイルになるんだろう…」



・・・。

「ハンナ、もしかして今までずっと見てたのは…?」
「え、カミツレさんだけど」

サトシがフィールドでバッジを獲得した傍らで、憤慨したアイリスが呑気ねと地団駄を踏むのはそう時間はかからなかった。






「じゃあ次はハンナさんね?私のポケモン達が回復するまで悪いけど少し待っててくれるかしら」
そう告げられて待ってる間に選出決めないと。

話に聞くとサトシはエモンガ、ゼブライカ、シビシラスの3体だった。その中でもシビシラスは切り札。
(シビシラスってたしかステータスはそこまで高くないし、技も4つしか覚えられないんじゃなかったっけ)と思っていたが、その条件の中であの戦いだとシビルドンになったとき驚異になるだろう。そう思うと、今からジム戦でよかったと思えてくる。あいにく地面タイプのポケモンは連れてきてないしメロメロが厄介だけどそれ以外ならどうにかなりそうだ。

「初のジム戦だけど緊張してない?」
手にとったひとつのボールにそう語りかけると、少しぎこちない震えが手に伝わる。
大丈夫。私も頑張るから一緒に勝とうね。

最近ジム戦前の毎回訪れるこの瞬間思う。こんな風に自分の手持ち達の様子を伺わずに一人で突っ走ってた昔とは変われた。
大丈夫。この子達となら勝てる。

「カミツレの準備が整いました。チャレンジャーはフィールドへ」



審判の声がトリガーとなり、フィールドへと足を進めようとしたら「頑張れ」というサトシたちの激励。


「ああ、絶対勝つ!」


なぜだか不思議と体が軽い。
ギャラリーにいる観客の再び現れたカミツレさんへの歓声の重さを体に感じることなく、自分のフィールドへと向かった。




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