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∴炎に誓う




"わたしが連れてってあげるから。君と見る景色や季節を知らないまま、君以外の知らないポケモンと旅に出てさよならなんて、いやだ。"





何言ってんだ、こいつ。
と思っていたはずなのに、いつの間にか引き込まれて。でも、不思議と嫌じゃなくて。むしろ心地よかった。
"初心者向けのポケモン"とは言っても、育ちすぎると意味がないらしい。気づいたら周りのヒトカゲ達は自分より小さく、そしてトレーナーと一緒にこの研究所から去っていった。
自分も周りのヒトカゲと同じようにトレーナーに引き渡されるはずだったのが、まさか尻尾ごと池に落ちて尻尾の炎が消えかけて。衰弱して治療されてる間にどんどん成長してしまうだなんて。


だけど、普通より成長してたおかげで旅は序盤から快調で。
ハンナもバトルのセンスはあったらしく、順調に旅を切り進んでいく。
負け知らずで進む旅の途中でやってきた最終進化。
踊るように喜ぶハンナだけど、いきなり翼が生えて体もでかくなって、今まで普通にできていたことができなくなって。
それに気づいたハンナは「いっぱい練習や実戦積めば大丈夫だって!」と呑気なことかますけど、でも正論で。
ようやく変化した自分の体に慣れて、自分の翼で飛んだ時にふと思い出した

"わたしが連れてってあげるから。君と見る景色や季節知らないまま、君以外の知らないポケモンと旅に出てさよならなんて、いやだ。"



この言葉がなかったら、もしかしたら今でもあの研究所でヒトカゲのままで一生を過ごしていたかもしれない。
研究所以外の景色を、季節を感じることも、見ることもなかったのかもしれない。
今の自分には翼がある。
どこにでも行ける。ハンナを連れて。




今度は自分がハンナを導く番じゃないのか





ジム制覇まであと少し。
敵は終盤に向けて強くなってきている。


自分が強くなれば、その壁を越えてハンナを。



一度消えかけた尻尾の炎、ハンナの為に燃やし尽くしていこう。








"わたし、君に一目惚れしちゃった。"


"ねえ、君はどう?"






旅で築き上げてきたものは、強さと信頼と決意だった。








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