∴初めましてと一目惚れ
"ねえ、どうしてひとりでいるの?"
"わたしね、いま一緒に旅する子探してるんだ"
"わたし気に入った子ならなにタイプでもいいってオーキド博士に言っちゃったんだけど、本当は炎タイプが一番かっこよくて好きなんだ"
"だから最初にヒトカゲがいいなって言ったんだけど、オーキド博士は眉間にシワよせて、難しい顔して、
「いるにはいるが初心者のおまえにはダメかもしれん」って言われちゃったんだ"
"もしかしてきみのこと?"
『育ち過ぎたポケモンは、トレーナーの言うことを聞きにくい。』
それはどこかで読んだ本に書いてあったし、知識として、いつの間にか知っていたことだった。
他のヒトカゲより一回りも二回りも大きく成長したヒトカゲは、オーキド博士や研究員の手を手を焼かせていたことで有名だ、と。お父さんに聞いていたから。なんで博士が難しい顔をしたのか、この目で見てわかった。
本の挿し絵でよく見るような円らな目ではなく、ふてぶてしい、どこかつまらなそうで、気だるそうな双眸。
"きみ、生まれてからずっとここにいるの?同じ景色ばかり、つまらなくないの?"
"わたし、旅するなら君とがいいなあ。一緒に旅して強くなって、色んなこと知りたい"
"わたしが連れてってあげるから。君と見る景色や季節知らないまま、君以外の知らないポケモンと旅に出てさよならなんて、いやだ。"
"ねえ、わたしと一緒に旅に出ない?"
わたし、君に一目惚れしちゃった。
ねえ、君はどう?