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スカイアローブリッジ





「デント、あれがスカイアローブリッジ?」
「スカイアローブリッジ?」
「ああ、この先にあるイッシュ地方で一番大きな橋、その名もスカイアローブリッジ。」
「上からの眺めは最高よね〜」
「そして、渡った先にあるのがヒウンシティだ」
「あ、サトシ!あの摩天楼がヒウンシティだよ!」

ハンナが指を指した方向には、少し霞んだ橋の先にある、雲にも届きそうな超高層建築の集まり
「よぉし、一気に渡るぞ!!」
「ちょっと、一人で突っ走ってどうすんのよ!」

「本っ当にでかいなぁ…(イッシュの特殊な地形だからこそかな)


───…?」



スカイアローブリッジに目を奪われてて気づかなかった、橋の横にある突出した足場
「(除旧更新、か…)橋ができる前は船で移動してたんだね…」

時代が流れるにつれて古い物や制度は新しいものに切り替わり、時代は常に新しくなる。ここも同じということなんだな
(目に見えて実感するなあ…)こうして見るとジョウトのエンジュシティのすごさを思い知る。まあヒウンシティはビジネス街というし、利便性を重視したら船という手段ではどうしても限界があったのだろう。


「ハンナさーん!!止まってないで早く行こうよ〜!!!」
いつの間にか足が止まっていたらしい。特に気にすることもなくサトシ達を追いかけることにした







サトシが橋に入る前にコンビニでアララギ博士に連絡するから立ち寄ることにした。私も小腹が空いたから何か適当な物でも買おうと小走りでサトシに続く。
「ハンナさん転ばないようにね―?」
「こんな何もないアルファルトではさすがに転ばないよ!!」
「早く早くー!」
「サトシもそんな急かさないでよ転ぶぞ…ってちょっと、サトシ前!」
「え?…っと、あ…すみません…」
ちょうどコンビニの横から出てきた女性とぶつかりそうになったサトシが入り口を譲る。顔と声がマッチしてる綺麗な人だった。
「も〜サトシったら本当に子どもね…」
「ちゃんと前くらい見なよー?」
「慌てない慌てない」
「アハハ…とにかく、アララギ博士に連絡だ」



店内に入り、サトシが博士に連絡してる間にさっそくヒウンシティのガイドブックを手に取り、お目当てのカロリー●イトを取ろうとしたら横から伸びた手によって阻止された


「デント…?私お腹減ったんだけど、この手は?」
「お昼にあんなに食べただろう?間食は太るよ?」
「だーい丈夫。私いくら食べても太らない体質だから」
「ポーションコントロールはよくないよ?」
「君はどんだけカロリー●イトを食べさせたくないのかな?」

2人とも顔は笑っているが目は真剣そのものだった


『アララ…サトシ君の後ろのお二人さんは仲がいいのね

独身の私に対しての嫌味かしら?』
「そこでまさかのカミングアウトにビックリですよ博士」

いきなりの独身宣言に空腹がどっかに行っちゃったよ
『嘘よ、嘘。仲がいいのは何よりじゃない、独身なのは本当だけどね。』


あ、本当だったんだ





『じゃあねサトシ君、ハンナちゃん、次のジム戦頑張ってね!』


(茶目っ気があるというかなんというか…)
マメパトのボールを受け取ったサトシが行こうと促したがデントが固まったままだった
「デント、行こうよ」
「えっ、あ、ハンナ…か、カロリー●イトは買わないのかい?」
「自分で止めたんでしょ…?ほら、行こうよ」


(あんな茶化しで固まるなんてデントも子どもね)
一人状況を察知したアイリスはため息をついた
「あ、」


出入り口へ向けばさっきのお姉さんが額に飾られた写真を眺めていた。その写真にはスカイアローブリッジが出きる前の様子を写してあり、建設中の橋の横には人を乗せた船が岸からヒウンシティに渡っていた

「これは水上バスよ。この川に走っていたの…」
「へえー…」
どこかガイドさんみたいだなと、とても綺麗で丁寧な口調だと感じた。
「お姉さんはこの近所に住んでるんですか?」
「ぇ…ううん、ちょっと違うの!それじゃあ…」


そう言ってお姉さんはコンビニを出ていってしまった。それに続いて私が最初に手に取った冊子を買ってからサトシ達もコンビニから出たが、さっきとは打って変わって外は霧が出ていた。

「あれ、なんだよこれ…」
「さっきは晴れてたのに」
「いきなりね…」

そこでひとつのブレーキ音が耳に入った
「ああ〜、また霧が出てきたのね」
「ジュンサーさん、」
「ここはね、昔から霧が深いので有名な所なのよ」



ジュンサーさんが白バイから降りて゛ちょっと待っててね、゛と言えばボールを取り出し白い白鳥のようなポケモンが空に放たれた

「出てきてスワンナ!

さあ、出動!!」


「おお、」
「スワンナ?」
私とサトシが同時に図鑑を取り出した。


『<スワンナ>
しらとりポケモン
コアルヒーの進化型。嘴の攻撃は強烈。首をしならせて、連続して突きを繰り出す。』
『<スワンナ>
しらとりポケモン
コアルヒーの進化型。夜明けと共にスワンナ達は踊り始める。真ん中で踊るスワンナが群れのリーダー。』

「あれ、ハンナさんの図鑑の説明と違うや」
「私はベルの図鑑と同じ色だけど図鑑の説明も違うんだね」
あのいたずらっ子なコアルヒー達もいつかはこうなるのか…



「スワンナ、霧払い!!」
ジュンサーさんが自信満々に指示をしたが霧が払われることはなかった

「…あら?お、おかしいわね…ああ!!霧が発生したから車は通行止めよー!!止まって止まってー!!!」


これには思わずみんなが笑ってしまった
「あはははっ…なんかあのジュンサーさん可愛いね」
「うん、ジュンサーさんのイメージがちょっと変わったかも」
「わざわざ走らなくてもバイクで追っかければよかったのに…」
「それよりどうする?」
「うーん…この橋の向こうにヒウンシティがあるんだ、立ち止まってるわけにはいかないぜ!」
「そうよね!」


とは言うものの、橋の上は更に霧が深くなってきた
「全然前が見えないや…」
「確かに」
「キバゴ、私から離れちゃダメよ」


すると突然目の前に足止めするかのように攻撃された
「今のは何!?」
「サイケ光線だ!」
「通行止めのシステムにしては過激すぎない!?」
「それは絶対違う」
「なんでいきなり…」
仰げば上空には一体の黒い人型のポケモンが浮かんでいた。

「あれはゴチルゼル…!」
「ゴチルゼル?」
「サトシ、私にも!」

『<ゴチルゼル>
てんたいポケモン
強力なサイコパワーを操るポケモン。その技を使うと、周囲の空間が捻れ、異空間が広がると言われている。』

「そのゴチルゼルがどうして!?」


スゥ──…と、音もなく地に降りるゴチルゼル。やっぱり通す気は全く無さそうだ。
「俺達はこの橋を渡りたいだけだ!!」
゛だが断る゛これが一番しっくりくるゴチルゼルの返事だろう。首を横に振ればまたサイケ光線を向けてきた。

「僕達を渡らせたくないのか…?」
「それなら何としてでも渡ってやるぜ!

ツタージャ、君に決めた!」


ツタージャがリーフブレードを決めるが守るによって弾かれてしまった
すかさずゴチルゼルがサイケ光線を放ったち、リーフストームで迎え撃つ


しかし技と技がぶつかり合った時、白い光が辺りを包み込んだ。光が前から後ろに流れるように駆けていく───



気づけば浮遊感に襲われ、目を覚ませば自分達は草地に倒れていた。
「ツタージャ、戻れ…

──なんだ?どうなったんだ?」
「なんだか光に包まれたところまでは覚えてるけど…」
「…あれは」
「橋を造ってるんだ…」
「一体どこなんだここは」
「んー…」

突然のことに混乱していたところに幼い声が響いた
「お客さんですかー?」
「「「「?」」」」


橋の横には一隻の船、その手前には1人の女の子がこちらに話しかけていた
「水上バスに乗りますかー?向こう岸に行きますよー!」


「水上バス?」
「どうしよう」
「乗ってみようよ、ここがどこなのかヒントが見つかるかもしれない。」
「………(あの女の子誰かの面影があるような…)気のせいか。」




「はいどうぞ」
「ありがとう。」
女の子の元に行き、整理券を受け取り一足先に船へ足を運ぶ。(船なんてシンオウからイッシュに来た以来だな、)船ということもあり些か揺れで不安定だが転ばずに済んだ。すると女の子の口から無視できない単語が出てきた

「ゴチルゼル〜!この人達もお客さんよ、案内して―!」

だが先程のゴチルゼルとは全く違う、いい笑顔だった。
「さっきのゴチルゼル…?」
「ああ、でもちょっと様子が違うな」
「どうする?」
「行くしかないだろ。


…ハンナさんもう乗ってるし」



「もう…呑気ねー…」
「うん、何も言い返せないや…」


゛ごめん゛と同時にゴチルゼルがサイコキネシスで船と岸を繋いでいる紐を解いた
「船長、準備OKです!」
女の子が船長と呼ばれる男性にそう言うと船長のアナウンスと共に船のスクリューが回り離岸した。




「ジュースにお菓子はいりませ「いりまーす!!」
「…ハンナさん」
「嫌だわ私ったら…小腹が空いててつい」
「ハンナさん、時既に遅しって知ってる?」
伏し目がちに顔を赤らめて恥じらう女の子を演じてみるも手遅れだった

「ふふ、お姉さん。ジュースとお菓子を一個ずつでいいですか?」
「じゃあ4個ずつくれる?」
「え!?ハンナさんそんなに食べるの!?」
「違うから!奢りだよ」
「え、いいの?」
「ダメだったらしないって。はい、3人とも」
「「ありがとう!!」」
「サトシとアイリスはよくとも僕が奢ったのに」
「いいの!いつもご飯作ってくれてるんだもん。日頃の感謝ってことで!!」
「…っじゃあお言葉に甘えていただきます…」



(あれー…)
なんで顔を反らすのかな…ちょっと強引すぎた?別にいらなかったとかだったら悪いことしたな…
ハンナの方からは見えなくてもアイリスからは見えていた。




デントの顔が真っ赤になっているのを

「デントもまだまだ子どもね…」
「へ?」
「アイリス!!?」
「それにしてもこれ美味しいわね」
「うん、うまい!!」
「これあなたが作ったの?」
「そうだよ!」
「まぁ、偉いねえ」
「船長さん、



この水上バスもなくなるんだって?」


「なんだか寂しくなるわよねえ」
おばさんの何気ない一言に女の子が反応した
「んー…ま、これも仕方ないことさ」


船は間もなく橋の中間、建設中の部分まで到達した。ハンナはコンビニで買った冊子を開いて、見開きに写ってる名所と目の前の橋を見比べた
「あれ…」
写真の横にはスカイアローブリッジと明記してある。だが目の前の造ってる真っ最中の橋も写真の橋に酷似している。
「あ、(そういえば…)」コンビニにあった三枚の写真に写ってた水上バスと現在乗ってる水上バスは全く同じだ
その時今までずっと周囲を見ていたデントが口を開いた
「間違いない、この橋はスカイアローブリッジだ」
「私もそう思う。」
これを見て、とアイリス達にそのページを見せる
「たしかに同じだけど…でも目の前の橋は建設中よ?」
「僕達はスカイアローブリッジが完成する前の世界に来てしまったんだよ」
「ええ!?」
「タイムスリップして過去に来ちゃったってこと!?」
「いや、そうとも言い切れないんだよな…」
「え、それじゃあ…」

「はい、おやつ」

声のする方を向けば女の子がゴチルゼルにお菓子を渡して仲睦まじく一緒に食べていた。




「…とりあえずゴチルゼルを調べないことには始まらないんじゃない?」


ハンナの言葉に3人が強く頷いた。
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