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ジム戦、vsアロエ





「それではこれよりシッポウジム、ジム戦を始めます。ジムリーダーアロエ、トキワシティのハンナ!先攻はチャレンジャー、

バトル開始!」



「行け、ムウマ!」

「へぇ、ムウマかい。…ハーデリア!!」




「ハーデリアか…」
(ヨーテリーの進化型で特性は威嚇。ムウマの攻撃力が下がったけど直接攻撃は仕掛けないから…まあいいか、ここは後攻のために)
「ムウマ、接近して鬼火!」

ボゥ…、と。
赤黒い、妖しくそれでいて不規則に舞う炎がハーデリアを踊るように取り囲む。
「鬼火とは考えたね」
アロエの口が弧を描く。さすがジムリーダーの手持ちなだけあってハーデリアの素早さの方が勝っていたようだ。鬼火はハーデリアを捕らえることなく砂煙に紛れて消えた。


「ハーデリア!シャドーボール!」


「しまった…っ(やっぱりゴースト対策はしてたのか!)」
ムウマの鬼火は出来たばかりで命中が不安定、最初に接近したのがまずかった。切り替えの素早いハーデリアのシャドーボールが直撃してしまった。だがこれでわかったことは、アロエさんのゴースト対策はシャドーボールだけであるのは明確。順応性は高いが直接的な弱点のつけないノーマルタイプ、たかがひとつのタイプだけに貴重な技スペースを2つも3つも使うはずがない



「ほう?考え事とは悠長だね。ハーデリア、続けてシャドーボール!」
「避けてムウマ!」

その後も連続してシャドーボールを撃ってくるハーデリア。ムウマは速いわけではないが小さな体で小回りを効かせて宙を舞う。






「ハンナさん避ける指示ばかり出してる…?」
「…なんでムウマは避けてばかりで攻撃しないの!?」
「シャドーボールをまともに受けたからね、あと一回でも受けるとムウマは倒れるだろうし…ハンナも慎重になってるんじゃないかな」




(あとちょっと…あとちょっとだけ頑張ってムウマ…!)

「避けてばかりじゃ試合は進まないよ!!ハーデリア、今度こそ決めるよ。シャドーボール!





…ハーデリア…!?」

アロエがシャドーボールを指示したが当のハーデリアはアロエの指示に尻込むばかりでシャドーボールを出せないでいた。


(きた!!)
「ムウマ!もう一度鬼火!!」


「どうしたんだいハーデリア!くっ…ハーデリア、守る!!」



鬼火はハーデリアの守るによって弾かれてしまった、だがこっちの作戦は成功した。(ひとまずアロエさんの対策は壊せた…)もし当たったら…と強張ったハンナの表情が和らぎ、次のアロエの出方を伺っていた。
「まさか…、インテリ嬢ちゃん、アンタはなかなか嫌な手を使うねえ…」

アロエは私のしたことがわかったようだ、だけど気づいたところでもうハーデリアのシャドーボールは出せない。


「なんであんなに避けてるのかと思いきや、じわじわハーデリアのシャドーボールのパワーポイントを削るなんて。」





「そうか、ハンナはムウマに不利な技が来たら恨みをするように指示してたのか!」
「恨みってなんだ?」
「子どもねえ〜、恨みって言うのは、相手の最後に使った技のパワーポイントを少しずつ削る技よ!」



(こりゃまずいね…)
ハーデリアは守ると吠えるとギガインパクトしか出せない訳だけど…ハーデリアであのムウマを倒すことはできない。
「ふっ…インテリ嬢ちゃん、いやハンナ!ここまでやるとは正直思ってなかったよ。あたしもだんだん燃えてきた。ハーデリアでそのムウマを倒すことはできないけど、あたしもジムリーダーだ。こんなことではまだ諦めないよ!!

ハーデリア、吠える!!」





「また吠える!?」
「ヨーテリーだけじゃなかったのか…!」
「…ハンナがここからどう出るかが勝負の鍵になるかもね」




吠えるによって強制的にボールに戻されたムウマの代わりに出てきたのはハッサム。

(吠えるを使うってことは眼差しもくるかな…?)
だけどハーデリアは黒い眼差しを覚えられないはず。

「あたしも交代だ、ミルホッグ!

さあ、黒い眼差しだよ!」







「あああ、またこのコンボ!?」
「まあまあ…、アイリス落ち着いて」
「………



あれ…、別にハンナさん動揺してない…」
「え…?」
サトシが呟いた
…たしかにあまり動揺してるようには見えない
いつも通りの真っ直ぐだが挑発的なジト目に、少し崩した、ゆったりとした立ち構え。


「あ、アンタはなかなか肝が座ってるねえ。大抵のチャレンジャーはこのコンボを受けると動揺するんだけど」

「いや?慣れてるだけですよ」
シゲルのブラッキーに何度もその手はくらって何回も倒されてきた、今回くるとは思ってもなかったけどちょうどいい。
このままハッサムでいこう

「ミルホッグ、怪しい光!!」
「ハッサム、バレットパンチで阻止して!そのままダブルアタック!」


バレットパンチは先制技。怪しい光を撃つ前に攻撃してそのままダブルアタックで攻めようとしていた。


「なるほど攻撃は最大の防御ってことかい…!ミルホッグ、けたぐりで打ち返せ!!」


(けたぐりか…ハッサム意外と重いからな、一発ならくれてやってもいいけど…もうそろそろいいかな)
「ハッサム、できれば受け流して!」






「あれ…ハンナさんなんでボールを!?」
「ハッサムは交代できないはずじゃ…何するつもりだ?」
「…ああ、わかった。2人とも大丈夫だよ!」





赤白ツートーンのボールを構えた右手を前に突きだし、ホルダーに伸ばした左手には小さくなったボールが握られている


「ハッサムとんぼ返り!!」

「なんだって…!?ミルホッグ、ジャンプして避けるんだよ!!」





「とんぼ返りで…なんで大丈夫なの?」
「アイリスでも知らないことあるんじゃないか!」
「う…うるさいわね〜」
「とんぼ返りは黒い眼差しを無効化して交代できるんだよ。…だけどあのミルホッグには10まんボルトがある。ムウマに交代しても油断はできないよ」




「とんぼ返りを覚えてるなんてね。だけどそのムウマは最初にシャドーボールで大ダメージを受けてる。そんな状態でミルホッグを倒せるのかい?
ハッタリなんかじゃミルホッグを倒せないよ、10万ボルト!!」



「私は何の策も考えずに交代なんかしませんよ。



ムウマ、痛み分け!」



痛み分けは自分と相手の体力を足して2で割った数値にする技。今の時点でムウマの体力はもうあまりないがミルホッグはハッサムのバレットパンチを受けた。ミルホッグの体力を回復させることはまずないだろう。

「ミルホッグ!!」
痛み分けを受けて10万ボルトは不発に終わったミルホッグが、突如自分を襲った痛みに倒れ込んだ。

「絶好のチャンスだよ、鬼火!!」



命中が安定しなくとも、今のミルホッグには大ダメージを受けたムウマの痛みが一度に大きく影響して動けない。これが決まればムウマが勝つ。


蹲っていたミルホッグが片膝ついて立ち上がろうとするも、すでに黒い炎が周りを取り囲んで自分を凄まじい熱で覆っている。

アロエがミルホッグの名前を呼ぶも、炎が消えた場所には目を回したミルホッグが力なく倒れていた。


「ミルホッグ戦闘不能、ムウマの勝ち!」
キダチさんのジャッジはムウマが喜ぶものだった。


「やったねムウマ、お疲れ様。ゆっくり休んでね

ハッサム、もう一度お願い!」





「サトシ、なにをそんなに見てるの?」
「え!?いや、ハンナさんって楽しそうに戦うなーって思ってさ。」
「そういうことね…でも本当、いつもバトルの時みたいだったらかっこいいんだけどな〜…」
「ははは…それは一理あるかも…」



(聞こえてんぞ〜…)
ジトーって見てやったが気づいてない
「最後の一体だよハッサム、ダブルアタック!」

「こんな状況でも勝つ手段を探るのさ!守れハーデリア!!」

「あんたのテクニックを見せてやりな!もう一回ダブルアタック!」
「こっちも粘るよハーデリア、守る!」


守るは連発すると精度を失う、ハッサムのダブルアタックの二撃目がハーデリアの守るを叩き割った


「ハンナのあのハッサムの特性はテクニシャンか、ハッサムは元の攻撃力が高いから威力に申し分はない。そろそろ決まるよ」




「(これ以上はハーデリアがもたない、)ハーデリア、一気に決めるよ!!

ギガインパクト!!」

「シザークロスで迎え撃て!」



フィールドの中心で技が激しくぶつかり、爆風が巻き起こる。

さすがにノーマル半減とはいえ威力が高いギガインパクトを迎え撃っただけあってハッサムは結構ダメージを受けたようだ。だけどハーデリアは辛うじて立ってはいるがギガインパクトの反動で動けない。止めを刺すなら今だろう


「ハッサム、バレットパンチ」
ハッサムの先制の一撃がハーデリアを捕らえた



「ハ…ハーデリア戦闘不能!ハッサムの勝ち。よってこの勝負、チャレンジャーハンナの勝ちです!!!」



「ハッサム、ムウマお疲れ様!!」
ボールから勝手に出てきたムウマが飛び付いてきた。サトシとアイリスとデントもこっちへ向かってくる。
「おめでとうハンナさん!!いつものハンナさんからは想像もつかないくらいかっこよかった!!」
「うん、ちょっと一言余計だったかなサトシ。ありがとう」
「すごいよハンナ、テクニカルなハッサムにトリッキーな痛み分けを持つムウマ、ん〜テイスティングのしがいがあるぞ!!」

「デントはほっといてハンナさんほら、バッジバッジ!」
「あ、そうだった」



「ハンナ、あんたのバトルスタイルはキレがあってなかなか様になってる。アタシは負けたけど楽しませてもらったよ!!
さぁ、これがベーシックバッジだ」

「ありがとうございます!」
サトシより一足先にバッジを受け取りケースに嵌めた。


「これからもジム戦にナナカマド博士へのレポート頑張りな!」
「いいバトルを見させてもらいました、またいつでも図書館にいらしてくださいね!イッシュの資料ならなんでもありますんで!!」

「はいっ!」
「よーしっ!オレも負けてらんない!ポケモンセンターで回復したら特訓だ!!」



行こうぜハンナさん!!と勢いよくサトシに引っ張られたもんだから足がもつれて転んでしまった
「あ、ハンナさんごめん…」



「さっきまでの凛々しかったインテリ嬢ちゃんはどこ行ったんだい…」
「普段とバトルの時じゃすごいギャップなんですかねえ?」


((やっぱバトル以外はちょっと残念だなー…))
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