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デスマス






「…ダメだ…ああああ情報が足りないいい!!」

んもおおおお!!とゴミ箱に積もっていくのはボツになったレポートの山。途中まではよかったがやはり普通の本屋で一冊買ったのが間違いだったのかあるいは単に情報が足りないだけか


一人悶々としててもしょうがない、少し夜風に当たろうと窓を開いたがやっぱり散歩をすることにした。
昼間とはうって変わって静かなシッポウシティ。気がつくと博物館の前まで来ていた。

(みんな大丈夫かなー…)
一人博物館の前で立ち止まる。みんなが気になるがいざ一歩進もうとするが動かない。トラウマはなかなか乗り越えられるものじゃない、だけどトラウマは乗り越えるものでもある。

意を決してドアノブを捻ってみんなのところに行こうとしようとしたが


<ガチャッ>


「………」
ドアを開こうとしたが金属音だけが鳴るだけで開かなかった。



「そうだよ…もう閉館してるんだから施錠してあるに決まってんじゃん…」

今の自分かなり変人じゃん…
「そこで何をしているんだい!!」

「!?」











声の主はなんと出張から帰ってきたジムリーダーのアロエさんだった。謝ってから事情を話せばすんなり館内に入れてくれた。
「しっかし変なことになったねえ…悪いね、こっちのトラブルなのに仲間まで巻き込んで」
「いえ…突っ込んでった本人逹は割りとノリノリでしたから大丈夫ですよ」

さすが夜の館内というだけあってヒールの音がかなり響く。


「そうそう、この先に行けばイッシュ1の大図書館があるからよければ寄っていったらどうだい?」
「本当ですか!すごい助かります、私今ヒヒダルマについてのレポートを書いているんですが情報が足りなくて困ってたんです!明日ジム戦の前にでも行って調べてもいいですか!?」

心の中でガッツポーズを決める。
「おや、ジム戦するのかい?」
「はい!…あ、申し遅れました。私ハンナっていいます。ナナカマド博士の助手をさせてもらってます。今は旅をしながらイッシュのポケモンについてレポートを書いているんですよ、ヒヒダルマのレポートはそのためです」

「あんたまだ若いのに助手をしてるだなんてすごいじゃないか!研究熱心な奴は好きだよ、明日楽しみにしてる!」
「はい、よろしくお願いします!!」


「さて、そろそろ秘宝展のブースに着くよ。」
と言った時にタイミングよくサトシ達の悲鳴が聞こえた。
「行くよハンナ!!」

アロエさんが走り出した。ハイッと返事をして私も走り出す。さっきまでドアノブを触ることすら躊躇ってたのに今は不思議と怖くなかった、やはり一歩踏み出してみるものだ

秘宝展ブースの中が見えてきた、会話もハッキリ聞こえてくる

「デントは、あらぶる魂にとりつかれてしまったのよ!!」






……………へっ!?


前言撤回。やっぱりちょっと怖くなってきた…


「つまりそのデスマスのマスクは本物だったってことね。」
アロエさんに少し遅れて私も秘宝展ブースに着いた…怖いけどっ…目を開けて見てみたら








マスクを着けたデントと目(?)があってつい吹き出してしまった、
あれがとりつかれたデント!?


恐怖心はどこへやら
ついでにポケギアで写真に収めといた。

キダチさんがマスクの説明をしてるときに悪いが私は壁に手をついてずっと笑いを堪えてた。あれは不意討ちすぎる、だがアロエさんの「そんな訳ないだろう!!」の声にハッとして気を取り直す。

…デントから視線は反らしとく。




しかしデントの横にカイリューらしき骨格標本が釣糸無しで自立して組み立った。
「なにあれ…!?」
さすがにこれには驚いた
「もうおよし!お仕置きは十分しただろう」

だがデスマスはまだ足りないらしい、カイリューがこっちに向かって歩き出した
「しょうがないね…ミルホッグ!!」

アロエのモンスターボールから出てきたのはミルホッグというポケモンだった。ハンナは鞄からポケモン図鑑を出した

『<ミルホッグ>
けいかいポケモン
ミネズミの進化型。体内に発光物質を持ち、目や全身を光らせることができる』

なるほど、技のフラッシュでもないのにこんな強い発光ができるのはそのせいか、と目を細めて図鑑を見る。次はデスマスを見ようとしたがまだ姿が見えない、
「姿を見せたらどうだいデスマス。」
たまたま図鑑を向けた場所にデスマスがいたらしい。スキャンができた。
『<デスマス>
たましいポケモン
古代文明の遺跡をさ迷うゴーストタイプのポケモン。』



「な、なにがあったんだ…」
「デント、大丈夫?」
「ハンナ…もう具合は大丈夫なのかい?」

「もう、今はこっちの心配より自分の心配でしょ!?どこか変なとこはない?」
「な…ないよ」
「よかった…。びっくりしたんだから、来てみたら…
……
……うん、大変だったね。」

「なにその間!?」


「恐らくデスマスは展示物に紛れ込んでここまでやって来たんだね、

でもなんらかのアクシデントでマスクを落としてしまった。」

デスマスが頷く、アロエの推理はさらに続いた
「あんたはマスクを拾ってレプリカだと思って飾ったわけだけど、デスマスはマスクを奪われたうえケースに閉じ込められたと思ったわけさ」


「だからデスマスは怒ってこんなことを…」
「そうか、骨格模型や化石を動かしたのはサイコキネシス、霧は黒い霧…」
「雨は雨乞い、人魂は鬼火だったんだ!」




(なにそのなぞの技構成…)




「ね!!あらぶる魂っていうのもあながち間違いじゃなかったでしょう?」
「あー、微妙だな」
「なによ!!デントの推理よりマシよ!!ふんっ」

ちょっとあとでアイリスにどんなものだったか聞いてみよう


その後キダチさんとアロエさんが謝り事件は収まった。気づけばもう朝、私達はポケモンセンターに戻って寝れなかった分を取り戻すために寝た。起きたらレポートやってジム戦。寝る前に明日のジム戦に備えてポケモン達のコンディションを整えた。












「ここがイッシュのポケモンについての本があるスペース。ここならアンタの知りたいことや足りない知識も補えるはずさ、存分に調べて納得いくまで頑張るんだよ!!」
「ありがとうございますアロエさん!!じゃあサトシ、ジム戦頑張ってね!」
「ああ!ハンナさんも頑張れ!」

「ではハンナさん、もし終わりましたら司書の方に言ってください。フィールドまで案内しますので!」

「わかりました!!」

さすが大図書館なだけあって膨大な量の本の数。だがラッキーなことにヒヒダルマについての本はすぐに見つかった。この調子ならすぐ終わりそうだ。








本当に早く終わってしまった。だが見直した限りだと自分で納得いく出来だったからさっそく司書さんに案内された。フィールドに行くまでに貴重な本が保管されている書庫に辿り着いた。司書さんが言うには進めばフィールドまでの場所が一目でわかるらしい。
目移りしそうだがジム戦が優先だ、入り口を探したらなんともわかりやすい入り口を見つけた。本棚が上に上がっているのですぐわかった。階段の下からバトルの音が聞こえる、さっそく行こうと思ったがある名前が目についた。


「うっそ…ナナカマド博士の本だ…!!ちょっと見てみよう…」

重たいハードカバーの表紙を開いて驚愕した。


しばらく固まったが静かにパタン、と本を閉じ元の場所に返した。











(私の知ってるナナカマド博士があんなにカッコいい訳がない)





著者欄に写っている博士の写真が若かったのだった。














「頑張れ火の粉だ!!」



階段を下ってフィールドに着いたがまだバトル中だった。
サトシのポカブにアロエさんがヨーテリーというポケモンに突進を指示した。

「すごいねあのヨーテリー、火の粉のダメージなんてまるで感じてないよ」
「ハンナさん!!」


「ポカブ戦闘不能、ヨーテリーの勝ち。よってこの勝負、ジムリーダーアロエの勝利です」



「え!?」
キダチさんのジャッジに耳を疑った
(サトシ負けちゃったの?)



「ありがとうポカブ、よく戦ってくれた。」
だがポカブは落ち込んだままだった。サトシもいつになく落ち込んでいる


(アロエさんなにかあるな…)
あのサトシがここまで落ち込むくらいだ。威力が足らなかったとかっていうだけじゃなくアロエさんの作戦に翻弄されたか指示ミスの連発か…
わからないけど次の番は私だ。気を引き締めなければ

「アロエさん!!バトル、ありがとうございました!」
「あんたの真っ向勝負嫌いじゃないよ!またチャレンジしにおいで!!




…さて、と。インテリ嬢ちゃん?次のバトルはアンタだよ。レポートは終わったのかい?」

「ええ、お陰様で自分の納得するレポートが書けました。ありがとうございます、でもジム戦には負けませんよ!勝ってみせます。」
「ハハハ!!いいねえその威勢の良さ!じゃあルールを説明してやって」

「はいママ、当シッポウジムではチャレンジャーの手持ちポケモンのうちから使用するポケモンを2体、予め決めていただきます。バトルは2対2。ジムリーダーかチャレンジャー、いずれか一方のポケモンが2体とも戦闘不能になった時点でバトル終了です。なお、どちらもポケモンの交代は自由です。」

「インテリ嬢ちゃんにはこの2体でいくよ!!」

アロエさんの先発はハーデリア、ミルホッグは所謂エースというところだろうか




「2体か…」
(アロエさんはハーデリアとミルホッグ…じゃあムウマとノーマル半減するタイプでいこう。)

腰のボールから2個のボールを取った。あとの4個はアイリス達に預かってもらった。

「頑張ろうね。」
今日の出番の子達に言ってやったらボールがカタカタ揺れる、やる気は充分。私も頑張ろう



「それじゃあ始めようか?」


インテリ嬢ちゃん?と挑発的な笑みを浮かべたアロエさん。
両者が手に取ったボールを同時に投げてバトルが始まった。
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