シッポウシティ
─…トスタンプ!!
…カチュウ!
「…、」
聞き覚えのある声、目を開けたら青い空…とこちらを覗いてきたアイリスとデント
「あ、ハンナさん目が覚めた?」
「大丈夫かい?」
上半身を起き上がらせると頭に鈍痛。ふとスカートを見たら絞ってある濡れタオルがあった。
(あー…気絶したのか、)
チラーミィとピカチュウが戦ってる時にいた場所が悪かった。チラーミィのハイパーボイスのとばっちりを受けてしまった。ハイパーボイスは音波を激しく振動させる攻撃だ、ポケモンでも耳を鍛えることはできない。それは人だって同じだが人はポケモンの技に耐えられるような耐性はないに等しい。
幸い鼓膜は破れはしなかったが気絶してしまったというわけで。
「で、ベルからサトシにバトルしようってことね…」
なるほど、とさっきまでベンチに横になってただるい体を動かして座る。ベルのごり押しのバトルスタイルは嫌いじゃないけど見た感じニトロチャージという技は劣化版フレアドライブに見えなくもない。ボルテッカーの方がはるかに威力は勝るだろう
勝負が終わった。結果はサトシの勝利、(まぁ旅を始めたばかりならこんなもんだよな)
するとベルがボールからチラーミィを出してこっちへ走ってきた。
「ハンナさん、チラーミィが謝りたいらしいんですけど…私からも謝ります!すみません!」
ベルが頭を下げて謝ってきた。チラーミィのトレーナーになったけじめからだろうか、チラーミィに視線を移せば申し訳なさそうに小さく鳴いた。尻尾は最初見たときのように立ってはなく垂れている、
「いいよいいよ、私もいた場所が悪かったんだから」
ガシガシとチラーミィの頭を撫でてやる。「ベルも頭上げて、」これからまだまだ旅を続けてまた合った時にそんな顔してほしくないのが本音。謝ったんだし、それにもう気にしてないよ。と言えば元の明るい表情に戻った。
それからうん、と一息置いてからチラーミィをボールに戻しサトシに宣戦布告をして行ってしまった。
「あっハンナさん!今は無理だけど、今度合ったときはバトルしましょうね!」
私にもされた宣戦布告
「マイペースだなあ…」
「マイペースというよりも自分勝手なんじゃ…」
アイリスとデントが荷物を背負いながら言った。なんだか嵐が去っていったって感じ
───シッポウシティ
芸術の街と呼ぶに相応しい、街の至るところにオブジェが建つ活気溢れる街。
「ついにシッポウシティに着いたぜ!!」
「うわぁ〜…倉庫がいっぱい!」
「この街はね、使っていない倉庫を芸術家に開放してることから芸術の街と呼ばれているんだよ」
「本当、たしかに芸術の街って感じ!」
「そして、またお洒落度も高いことから憧れの街とも呼ばれている」
「へぇ〜…いいね、私こういう街結構好きだよ」
(ドーブル連れてきたら喜ぶだろうなあ…)
ジョウトで出会ったドーブル。壁に落書きするくせがあるのは困ったが絵のセンスは確かなものだった。
「芸術の街だろうが、憧れの街だろうが関係ないぜ!!オレの目的はただひとつ!ジム戦だ!」
「シッポウジムなら、この街の博物館にあるよ」
「へぇ、博物館にジムがあるなんて珍しいな!」
「イッシュのジムってなんか変わってるよね。」
ジムに仕掛けはあるが何かと兼ねているのはイッシュに来てから初めてだ
「さっそく行こーう!!」
「あれ…、博物館閉まってない?」
博物館に来たもののドアの前に看板が立てられていた。
「ええ!?なんで閉まってんの?」
「シッポウジムにチャレンジしにきたんです、誰かいませんか?」
サトシが迷惑にならない程度の大きい声でいってみるが全く反応がない。
「…!この秘宝展のポスターの日付今日からだ…」
「本当だ。それなのに閉まってるなんておかしいな」
サトシが再度ドアを叩いて声をかけるが反応がない…と思ったら返事ではなく中から男性の悲鳴が聞こえてきた。
「もしかして…強盗!?」
と言った瞬間入り口のドアから何かがぶつかったと思われる衝撃音が
「止めを刺された!!?」
ひぃ、と一人勘違いをしていたら中から人が転がり出てきた。
「かかか勝手に殺さないでください!!」
あ、聞こえてたのね…
「ハンナさん、ドラマの見すぎ」
「あの、大丈夫ですか?」
デントが落ち着いて話しかけると男性はカブトの化石に追いかけられたと博物館の廊下を指差した、だが廊下が続くだけで何もない。
「何もいませんが…」
「でもいたんです!!」
たしかにさっきのあの必死で逃げたビビり様、演技には見えない…
「なぁ、行ってみようぜ」
中には入ったが別に変わったところはこれといってない。カブトの化石もちゃんと置いてあった。
「カブトの化石ならここに置いてありますよ」
部屋の出入り口に向かってデントが言えばひょこっと先ほどの男性が出てきて信じられないといった感じにたしかにさっき追いかけられたと言った。
「…何があったのか詳しく聞かせてもらえますか?」
デントの一言でこの怪事件に首を突っ込むことになった
「実は…秘宝展開催の準備が遅れてしまって、昨晩やっと展示物を運び込みスタッフと一緒に準備をしていたんです。」
博物館の中から場所を移して話を聞くことになった。少し喉が乾いたため外に設置されてた自販機で水を買って飲みながら事情を聞いていた。
「深夜までかかってどうにか作業を終え、私だけが残って展示物の最終チェックをしていたら…突然明かりが消えて…
とりあえず照明のスイッチの方へ向かうと──…
後ろからついてくる足音が!
なんか嫌だなあ〜と思っていると今度は泣き声が聞こえてくるじゃありませんか…!
怖くなった私は一端家へ帰ってスタッフと一緒に調べたんです。でも、原因はわかりませんでした…
それで安全を考えて秘宝展は開催を延期し、私はスタッフが帰ったあともう一度一人で中を…」
で、僕たちと遭遇したわけですね。とデントが続けば男性は頷いた。
「……………」
「不思議なことってあるんだなあ…」
(ヤバい…)
昔のトラウマを思い出してきた…今やアイリスとデントの口喧嘩なんて耳には入らない
ナナカマド博士の助手になって間もないころ、ある調査を任された。
リーフィアの進化についてハクタイの森へ向かったのだ、森に着いたのはいいが肝心の岩の場所を聞き忘れた。だが森の中にある洋館を見つけて住人に岩の場所を聞こうと中に入ったのだが、住人と思った食道にいたおじいさんは足を動かさずにどこかに消えていくし。絵から強烈な視線を感じるわ、ロトムを捕まえたにも関わらずテレビは動いたままだし…女の子がこっちを向いて消えたと思ったら身代わりの技マシンが代わりに置いてあった
結局後日他の研究員と一緒に岩を調べに行った
(いやああああああ思い出したあああああ!!)
グシャアッと水の缶を思わず握り潰してしまった。
「えっ、あ…ハンナ…さん?」
ハンナが俯いてしまった、キダチが「も…もしかしてこの手の話は苦手でしたか?」と控えめに言ったら
「ゆ…幽霊なんて…、いいいいいるわけ…な…ないよ…うん。」
「「「「(あ、怖いんだな…)」」」」
顔をひきつらせて無理に口角をあげてあらぬ方向を向いて言うもんだからバレバレだった。
「安心してハンナさん、キダチさん、あらぶる魂が何に怒って何に祟ろうとしているのか調べてあげるわ!!」
え、なにその流れ
「僕はその超状現象が起きた理由を科学的アプローチから解明します。」
「ちょっと待てよ!!オレのジム戦はどーなるんだ!?」
「それどころじゃないでしょう!?」
アイリスに負けたサトシ。だが博物館がこんな状態じゃジム戦はまず無理なのは言わずともわかるだろう。そこでキダチが追うように言った
「それにジム戦ならママが出張中でできませんよ」
「へ…ママ?」
「このシッポウ博物館の副館長は私、キダチが
そしてママは私の奥さんのアロエです。シッポウジムのジムリーダーです」
「そうだったんですか、俺サトシです!こっちは相棒のピカチュウ」
「私はアイリス。」
「僕はデント、ポケモンソムリエです」
「あたしはハンナ、ナナカマド博士の助手をさせてもらってます。」
ナナカマド博士の名前は有名なようだ。「まだお若いのにすごいですね」とキダチが驚いていた。
「ハンナさん顔色悪いよ?」
「え…そう?」
突然サトシが心配そうに言ってきたから何かと思えば…
「無理しない方がいいんじゃない…?まだこの前のハイパーボイスの効果が残ってるのかもしれないし」
「ひとまず今日は先にポケモンセンターに行ってゆっくり寝た方がいいと思うよ」
デント達とは別行動で先にポケモンセンターで休むことにした。
(私ってこんなに顔色悪かったっけ…)ってくらい青ざめていた。
「あ、そうだ」
休む前にポケモンセンターでポケギアのアップグレードするんだった、と思いだしジョーイさんの元へ小走りで向かった。
「はい、新たにテレビ電話とタウンマップアプリ、イッシュのテレビやラジオも聞けるようになりましたよ!こちらにさらに詳しい機能の説明を書いた紙があるので持っていってくださいね。」
「ありがとうございます。」
さて、一休みしてレポートを終わらせようと部屋に入ったときポケギアが鳴った。知らない番号からだが一応出てみる。
「もしもし?」
『あ、ハンナ?僕だけど今博物館の電話借りてるんだ、それで今日は僕たち博物館に寝泊まりすることにしたからそれだけ伝えとこうと思って』
「まじで!?博物館に!?」
人助けとはいえよくやるなあ…
「わかった。探偵ごっこもほどほどに!気を付けてね」
『ははは…ハンナもお大事にね、』
バイバイと挨拶して切った。ハァー…と大きくため息をついてフカフカのベッドにダイブ。そのまま吸い込まれるようにハンナは眠りについた。