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笑顔




あれからすぐデントの呼び掛けで私達はイシズマイ逹を探すことにした。私とマメパトは空から手分けしてイシズマイ逹を探しているがやはり地中に潜って移動されては行き先が全く見当がつかなかった。それにイシズマイ達の岩がまた厄介だった。その辺にある岩とたまに、いやしょっちゅう間違えるのだ。

「日も暮れてきたからそろそろ戻ろうリザードン」




サトシ達の所へ戻ったらすでにマメパトがいた。サトシのガッカリした様子だとマメパトも見つけられなかったのか

アイリスが私とリザードンに気がついて手を振ってきた
「こっちもダメ。岩と間違えるし今の時間だと夕日のせいで色もみんな同じに見えちゃうし」



ちょうどその時地面からヤナップと少し遅れてイシズマイも出てきた。どちらもだめだったらしい。
「んー、イシズマイは移動式のすみかだから特定の場所にいるって訳ではなさそうだし見つけるのはちょっと難しいかもね…」


私の言葉を聞いてデント少し考える。



「仕方ない、あとは明日にして夕食にしよう。」
暗くなってからは探せないのでそれが無難かもしれない。アイリスも私も頷く
「そうだな」とサトシも賛成した。


「イシズマイ、君もおいで」
『ナップナップ!!』


(なんだか友人宅でごちそうになる友達みたいな感じだな)
イシズマイは首を傾げたがそのまま着いてきた。











「どうだイシズマイ、デントのポケモンフーズうまいだろ!」


イシズマイも一緒に夕飯を食べることになった。イシズマイもデントのフーズが気に入ったようだ、もう皿の半分近くまで食べていた。



『ナァ、プ…』


「ヤナップ!?どうしたんだ、」


トサッと軽い音をたてて倒れたヤナップにみんな慌てて駆け寄る(ヤナップの顔が赤い…)熱冷ましになるような薬も木の実も持っていない、とりあえずテーブルの上にある布巾を取って濡らしに行こうとした



「昼間、岩が当たったせいか…?」
その一言で足が止まった、イシズマイの表情が酷く辛そうだった。申し訳なさでいっぱいなんだろう

「困ったな、薬がないよ」
「だったら私に任せて!薬草のことはわたし詳しいから!!

さっき熱冷ましになりそうな薬草があったの。ね、キバゴ!」


そう言って薬草を探しに行ってしまった。今はアイリス達に任せるとしよう、
「イシズマイ、ここはアイリス達に任せるとして濡れた布巾をヤナップにあげたいから川に行こう?」









川から帰ってきたらアイリスがさっそく薬を作っていた。かなり慣れた手つき、相当教え込まれたのかな。
「できた!!

ほら、ヤナップ口を開けて。これを飲んでね、ちょっと苦いけど」


一晩寝れば熱は下がるらしい、ひとまずよかったねとイシズマイに笑みを向けた。だがイシズマイはまだ心配そうにヤナップを見ていた、
(いい子なんだけど心配性なのかね…)

「デント、布巾だけど今はこれで熱を冷ましてやって」
「ありがとうハンナ、イシズマイ
もう夜遅いしそろそろ寝ようか」


そうだな、とサトシが言えばピカチュウとキバゴがあくびをした。










あまり眠気はなかったから月明かりと焚き火を頼りに寝袋に入ったままレポートの続きをすることにした。時たまチラッと横目にイシズマイを見守る。寝ずにヤナップの看病をしている。明日のために早く寝た方がいいんじゃないかと思ったが不思議と止めようという気は起きなかった。視線をレポートに戻し続きを書こうとした時「心配なのかい?」ていうデントの声が耳に入った


(あっぶな…、反応しかけちゃったじゃんか…)
話しかけたのはイシズマイへで、私が起きていることには気づいてないようだ。一度手を休めデント達に耳を傾けた。

「大丈夫だって

アイリス達が採ってきてくれた薬草を飲んだし、明日になったら元気になっているさ」

『イマーイ…』


「気にするなイシズマイ、お前ももう寝なよ。明日は取られた家を取り返さなきゃいけないだろ?」

『ナッ…プ…』
『!』


イシズマイがヤナップのはだけた毛布をかけなおして眠りについた。


(デントとあのイシズマイ、結構いい感じのコンビじゃん…)
私は再びペンを走らせた











「よかったねヤナップ、熱が下がって!!」
「アイリス達が見つけてくれた薬草のお陰だよ。」
「もう心配ないな!!」

「イシズマイもずっと見守っててくれたんだよ」


「…なあ、ハンナさん起こさなくていいの?」


オレ起こしに行こうか?、とサトシがさっきまで寝てた場所に向かおうとしたがイシズマイに止められた。
「サトシ、これこれ」とデントがハンナの寝てる手元を指差した。


頭にはてなを浮かべながら寄ってきたサトシだが見た瞬間理解したようだ。
レポートを書いてる途中で寝てしまったんだろう。所々文字が歪んで力尽きたであろう場所にはみみず文字が紙に描かれていた。

「そうだな、寝かせとこう。…でも何も言わないままだと心配させるからな〜」
「だったら書き置き残せばいいんじゃない?」
「そうだね、この紙はもう違う紙に書き写さなきゃいけないだろうし、この余白に書けばいいと思う」


あっ、とひらめいたようにアイリスがデントとサトシを引き寄せた。
「──なるほど、いいねそれ!」
「オレも書く!」












「───…ん゛ー…


………


……………ん?」



目覚めたハンナが一番に目にしたもの。
「うっわ超レポートにみみず走ってんじゃん…あ〜書き直しだなこれ…


…あ、」


そして二番目に目にしたものは

゛頑張りやさんなハンナさん、寝起き悪いんだから夜更かしも程々にね!起こすの大変なんだから!
先にイシズマイの家を取り返しに行ってるね!アイリス゛

゛ハンナさんレポートお疲れ!!アイリスに書こうとしたこと全部書かれたからなに書けばいいのかわかんないよ。早く起きてね!バトルしようぜ!サトシ゛

゛お疲れ様ハンナ、サトシの字が大きすぎてあんまり書けないけど先に待ってるからね。デント゛



「ハハッサトシ字ぃきったないな〜!てか全部書かれたってアイリス寝起きのことしか書いてないじゃん!!」
失礼な!!…だが嬉しい、この紙は捨てずに持っとこう。さっさと着替えて追いかけなきゃ、





リザードンに跨がり空から探すことにした。
「いないな〜…リザードン、あっちの方行ってみよう。」

方向を変えた時だった。向こうの崖からでかい岩が転がり落ちていくのが見えた。耳をすませばかすかに人の声と戦闘の音

「見つけたよリザードン、急ご…


…なんでキバゴがエサ引きずってんの…?」



たまたま見えた崖と崖の間、キバゴがエサ引きずって走っていた。しかしよく見たら後ろから岩が追いかけている…


(また古典的な方法で釣ったなあ〜)
キバゴを空から追って合流することにした。








「さぁ、君の作った家だ!自分の手で取り戻すんだ!」

「順調に行ってるようだね、あとはアイツだけ?」


「あ、ハンナさんおはよう!!」
「おはようサトシ。あの流れの最後にバトルしようぜ!はなかなか斬新なしめだったよ。」

「読んでくれたんだ!!」
「うん、ありがとね。」
「全くハンナさんとサトシったら呑気ね〜!」

そうだった、イシズマイとボスのイシズマイが戦ってるんだった。イシズマイ達を見たら空中で攻撃を止めて背中の岩で攻撃をくらったイシズマイの姿
「なんで攻撃をやめたんだ!?」

「そうか…!自分で作った家に、攻撃なんてできない!!」

「なんて卑怯な…っ!!」
この勝負絶対勝ってほしい、だが自分で取り返と言ってる以上は見守ることしかできない。

イシズマイが撃ち落とすでこっちに飛ばされてきた、
「イシズマイ大丈夫か!?」


(なかなか根性はあるようだね…)
「イシズマイファイト!!」
「よし、負けるなイシズマイ!!」
「イシズマイ頑張って!!」


あと少しで家を取り戻せる。イシズマイが高さの低いアーチ状の岩場に誘い込みボスのイシズマイの動きを止めた、止めをさすなら今だ

イシズマイがチャンスを逃さずシザークロスを決めるが威力不足でカウンターの切り裂くを間近で受けてしまう。だがイシズマイの体が白く輝き、赤い亀裂が走った。

「あれって殻を破る!?」
「ああ、イシズマイの殻を破るだ!」
「殻を破る?」

「防御を捨てて攻撃力を上げる技よ!!」


これに全てを賭ける気だろう、イシズマイの体が赤く輝く。破った殻がイシズマイの爪に吸収されていく、


『イィ──…マァイ!!!!』



イシズマイのシザークロスが相手の岩だけを砕きイシズマイは地に降りた。
相手を振り返り威嚇するその姿は最初のいじめられっ子の時のイシズマイとは全く違うものだった。


相手は自分を守る岩をなくし慌てて逃げていった
イシズマイがすかさず自分の家を無事か確認したがなにもなかったようだ、

岩を背負い喜びのあまり飛び跳ねている。



「すごいわよイシズマイ!!」
「ついに取り戻したんだな!!」
「しかも自分の力で!よくやったぞイシズマイ!」
「やればできるじゃない!おめでとう!」


今までは家を取られて落ち込んだり、ヤナップへの罪悪感に苛まれてたイシズマイだったけど、
(やっとイシズマイの顔に笑顔が戻った…)









「それじゃあイシズマイ、僕たちはもう行くから」
「元気でな、また会おうぜ!」
「もう家を取られないようにね〜!!」
(あれ…デント仲間にしないんだ)

二回目の夕刻、さすがにそう同じところに長くはいれない。イシズマイと別れの挨拶をして歩を進めた


だが後ろからはカリカリと軽い足音。
「ねえデント、イシズマイ着いていきたいんじゃないの?」

ハンナの突然の一言とイシズマイの鳴き声に4人は振り向いた。そこにはデントを見上げるイシズマイ。
さっきのハンナの言葉を気に止めつつ「どうした?」と聞く。

イシズマイが小さな体でなにかを訴えている、
「ほら、デント!」
軽くデントの背中を押してやった。

「僕と一緒に来るかい…?」


その言葉を待ってたと言わんばかりに頷くイシズマイ

「なるほど…自分の力で家を取り戻すどっしりとした味わい、熱を出したヤナップを看病する優しいフレイバー…

確かに、僕にピッタリのポケモンだよ!よし、一緒に行こう!」


デントが高らかにボールを投げる、イシズマイは自分からそれに入っていった




新しい仲間は嬉しいが…
(味わいとフレイバーって…なんか響きが非常食みたいだなあ…)




声には出さず心の内に止めておこう。再びシッポウシティにむけて出発した。






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